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「あと1点が遠かった今年のドラゴンズ」地元ラジオの実況アナが語る今シーズン

谷繁元信兼任監督

監督だけではなく、選手として試合に臨むため、キャンプ時は選手としての体作りもしっかりとこなしていた

 古田敦也氏以来、8年ぶりとなる兼任監督としてドラゴンズの監督に就任した谷繁元信兼任監督。週刊SPA!本誌では今年の3月より、谷繁元信兼任監督のコラムを連載してきた。日本プロ野球史上初となる現役監督の週刊誌連載では、新聞やテレビでは垣間見ることのできなかった、素顔の谷繁元信の本音、組織論、野球論が語られた。

 そんなドラゴンズの成績は、8月までの好調と打って変わり、CS進出を逃し、なんとか4位で今季をフィニッシュした。11月17日発売の週刊SPA!では、谷繁元信兼任監督コラムの今季の連載最後となるスペシャルインタビューを掲載。その中で、監督としての苦労や来季について抱負を語って頂いた。そこで今回はその番外編として、日刊SPA!では地元記者、アナウンサー、谷繁元信兼任監督担当ライターに谷繁ドラゴンズの一年を振り返ってもらった。

<実況アナウンサー編>

 スポーツ紙記者に続いて話を伺ったのは、東海ラジオの森貴俊アナウンサー。森アナは今期、30試合以上の試合を実況し、ドラゴンズを練習中から試合中、そして試合後までフルに見てきた。そんな森アナの目には、今年のドラゴンズはどう映ったのだろうか。

◆あと1点が遠かった今年のドラゴンズ

――選手・谷繁元信から監督・谷繁元信となった今季ですが、どんな野球をやってきたと森アナの目には映りましたか?

東海ラジオの森貴俊アナウンサー

森 貴俊……東海ラジオのアナウンサーとしてドラゴンズの実況を担当

「谷繁監督は試合の流れを重視する指揮官だと思う。流れを持ってくる。持っていかせない。目には見えない流れを感じ取ることに長けていると思う。試合後の監督の口からも『流れ』という言葉を何度も耳にした。“持ってくる”上でやはり欲しかったのは“もう1点”だったのではないかと思う。谷繁監督は就任当初から守りを重視していた。打線は水物という考えも合ったと思う。でも、もう1点を追及できなかったのも今年のドラゴンズなんだよ。計算外だったのは守備じゃないかな」

――8月の連敗時に監督は“ありえないこと”として、大島と藤井の交錯プレーにおける落球を挙げています。

「一時は鉄壁のディフェンスを誇ったドラゴンズの守りだけど、しかしこの数年は綻びが目立ってきていたのも事実じゃないかな。8月の大島、藤井の衝突落球が象徴的に扱われるけど、年間通して守りのミスがコンスタントに出たシーズンだったと思う。流れをもっていかせない上ではミスを減らす事が一番の近道と言えるワケだけど、その近道が使えなかったのは大きいんじゃないかな」

――投手陣の不調も追い打ちをかけたように思えます。

「スタートから大野の不安定 岡田の先発不調、カブレラの不調、計算できたはずの先発投手が順調に勝ち星を挙げられない。濱田がプロ初先発初完封勝利という鮮烈なデビューからローテの一角を担ったけど、やはり年間通して先発陣のやりくりが窮屈だった印象があるね。吉見のいない中、ベテランの山井を中心に途中から大野の復調もあったけど、前半戦だけで大型連敗が4度。同一カード3連敗も目立ったシーズンだったよね、今季は。本来は1勝2敗で負け越しても2勝1敗で1週間6試合を5割でいって、爆発力はないが急降下もしない。言い換えれば夏の勝負所までじっと我慢するのがドラゴンズの良さなんだけど、浅尾の離脱と田島の不安定な投球で必勝パターンを構築できなかったのは痛かったんじゃないかな」

――野手もなかなか勢いに乗れない一年だったように思えます。

「新しい4番として平田が起用されたけど、交流戦明けにケガで離脱。ルナを4番に据え、森野ルナ和田のクリーンナップがメインだったけど、このチームはホームランでビッグイニングを作るチームじゃないんだ。大島、荒木、森野、ルナ、和田、ここまでで何とか1点2点。そんな攻撃が多かった。課題は6番以降にも残ったと思う。5番で打線が切れてしまうんだ。長嶋コーチも平田がケガで離脱した時期は『6番が座らない』と口にしてたしね。切れ目のある打線は相手投手からすると楽なんだ。今年のドラゴンズはそこを敵から突かれたんだよ。何番でも出塁し、どこからでも得点チャンスが生まれるという野球というゲームでは理想とされる展開からは遠かったチームになってしまったわけだ。数少ないが下位打線から作ったチャンスが上位打線に回ったケースでも、大島がブレーキになるケースが多々あったのも辛かったよ。球団タイ記録のシーズン186安打をマークして打率318のリードオフマンとして素晴らしい数字を残したけど、得点圏打率は2割前半。1番にタイムリーが必要ないという理屈は存在しないワケで、打線に穴があったのが攻撃面では最大と弱点なってしまったんだ」

――監督としても苦労というか苦悩の一年だったと。

「投手だけでも多くの故障者を抱えたシーズンだったからね。今シーズン8月後半から9月なんだけど『勝負所で追い抜く足は残っていますか?』といったニュアンスの質問を何度もぶつけたけど、力強い回答は聞くことができなかった。監督は何度も『いない人のことを言ってもしょうがない』と言ったことに象徴されるように、主な故障者は、これまでの主力と呼ばれる人たちで、そういった主力の復帰を待ち望むと同時に主力依存から脱する時期に来ていたと感じた」

――ドラゴンズと言えば投手力。しかし、野手陣の不調も今年は目に付きました。

「打順に苦労したよね。このチーム、実は9人を守備位置に並べてみると意外と“空き”のあるチームじゃないんだ。シーズン前から確実な“空き部屋”だったのはショートだけでしょ。でも、そのショートに苦労した。高橋周平がオープン戦でダメってなって、エルナンデス、堂上直、三ッ俣とそれぞれに特色のある選手が出てきたけど、結局ショートを掴み取ったと言える選手は出てこなかったと思う。外野も平田の故障、和田の骨折、何人もの外野手が試されてチャンスも与えられたんだけど、結局、十分な活躍をしたのは藤井1人だけだったんじゃないか」

◆貪欲な若手がドラゴンズを底上げする

――なかなか厳しい一年だったわけですが、来年はどうなると思いますか?

「ルーキーの祖父江、又吉、そして福谷が出てきたのは大きいよ。祖父江は後半疲れが見えたけど又吉、福谷という新しい必勝パターンが組めたのは来季へのプラス材料だよ」

――後ろの投手陣が安定してきたの好材料としても、野手に不安は残るように感じます。

「来年も今年と同じようなメンバーが1番から9番まで並ぶ可能性もある。しかしため息をつかないでほしい。143試合、全てを同じメンバーで戦えるほどプロ野球の1シーズンは優しくない。故障、不調はつきものだしね。そこで誰が穴を埋めるかが非常に重要になる。『勢いだけで5勝してくれるのが出てきてくれるとな……』と森ヘッドコーチは言ってたけどい、それが今年は濱田だった。勢いも結果がついて来れば実力に代わると思う。藤井は『2軍ではHのランプがついても内容がなければだめだと考えます。しかし1軍は内容がなくてもHのランプがつけばいいんです。それが結果ですから』と言ってたのが印象的だね。結果に貪欲になる選手がこのオフ何人出てくるか。この貪欲さがチームの底上げにつながると僕は信じている」

⇒【次回】「スポーツライターの小島克典氏」編 http://nikkan-spa.jp/750678

【森 貴俊氏】
東海ラジオのアナウンサーとしてドラゴンズの実況を担当。今年は30試合以上を実況。全国の球場を飛び回った

<取材・文/日刊SPA!取材班>
― 谷繁ドラゴンズの一年を振り返る【2】 ―

週刊SPA!11/25号(10/17発売)

表紙の人/柏木由紀

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