「バブル感なき“奇妙な”バブル」の正体とは?【アベノミクスが効かないワケ】
―[資本主義の限界]―
株高・円安のアベノミクス相場が再燃している。金融市場はイギリスのEU離脱ショックから立ち直り、アベノミクスが順調に再起動されたかのように見える。ところが「前代未聞のバブルには非常に大きな副作用があり危険」と警鐘を鳴らすのは、8月12日に新刊『資本主義の限界』を上梓する名城大学都市情報学部の木下栄蔵教授だ。
――前代未聞のバブルとは?
木下:日本経済に異様なバブルが発生して拡大しているということです。1637年に起こった最初のバブル、チューリップの球根ひとつに労働者の年収25年分の価格がついた「チューリップバブル」以降、人類は数々のバブルを経験してきました。しかし、今、日本で発生しているバブルは、これまでのバブルとはまったく性質が違うものなのですが、その事実に誰も気付いていません。
――資産価値が本来の価値をはるかに超えて高騰するのがバブル。「今のバブル」は何が違うのでしょうか。
木下:それを説明するには、「正と反の経済学」を理解する必要があります。すべての物質には「反物質」があることをご存じでしょうか。電子に対して「反電子」があり、中性子に対して「反中性子」がある。これを最初に提唱した南部陽一郎博士はノーベル賞を受賞しました。それと同じように経済にも「正の経済」と「反の経済」があるとするのが私の理論なのです。
――経済学も物理も同じであると……?
木下:考えてみてください。これまでの経済学は矛盾だらけでした。セイの法則は「供給が需要をつくる」というのに、ケインズは「需要が供給をつくる」と逆のことをいう。アダム・スミスは個々人が己の利益のために働けば「神の見えざる手」によって社会全体の幸福が達成されるとするのに対して、ケインズは「個々人が貯蓄に励めば社会全体は貧しくなる」と指摘しました。アダム・スミス以降の古典派・新古典派経済学とケインズ経済学は経済学の主流な理論であるにもかかわらず、両者には明らかな矛盾があります。これまでの経済学には「ひとつの経済に対して2つの視点」があり、しかし、これはどう考えてもおかしい。そこで、2つの視点をひとつに統合しようというのが、「正と反の経済学」なのです。
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1975年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。編集プロダクション「ミドルマン」所属。株、FX、仮想通貨など投資関係の記事を幅広く執筆。著書に仮想通貨の入門書『ヤバイお金』(扶桑社)、『FXらくらくトレード新入門』(KADOKAWA)など
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『資本主義の限界』 日本経済が延々と低迷を続ける理由は「たった1本の経済線」で解き明かせる! |
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