東大卒・ダサさの中心で愛を叫んだケモノの凶行――鈴木涼美の「おじさんメモリアル」
―[鈴木涼美のおじさんメモリアル]―
『「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは自らを饒舌に語るのか』(青土社)、『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』(幻冬舎)などの著作で「性を商品化する」女性たちの内面を活写し注目されている文筆家の鈴木涼美が、「おじさん」をテーマに日刊SPA!で連載する「おじさんメモリアル」第23回!
【第23回 ギザギザハートの東大男】
時々、読者の若い女の子に、「鈴木さんの本やコラムを読んで影響され、AV女優になってみたくなりました」とか「やっぱり若いうちにAVとか出て女の特権を駆使しまくった方がいいでしょうか」とか言われて、自分がいかに教育に悪い存在か思い知らされる。AVなんてできれば出ないほうがいい。好きな人以外とキスなんてしないほうが精神衛生上良いし、業界内には未だに無知な女性から搾取しようとする悪どい人もいる。思っているより稼げないことも多いことからそのままズルズルと風俗など別の仕事にも手を広げ、気がつけばほかの仕事や趣味にかける時間を食われてしまうかもしれない。そして何より「大きな弱み」を自ら作ってしまうことになるからだ。
多くのAV女優が現役時代、あるいは引退後に、AV出演について知られたくない相手がいる。親や親族、地元の旧友、新しく始めた仕事の上司、婚約相手。そして、知り合いのただ一人にもバレずにモデル業をするというのが困難であることから、嫌な言い方をすればAV女優であることやあったことを知っている知人には常に弱みを握られていることになる。良識的な友達は黙ってくれる場合がほとんどかもしれないが、人にわかりやすい脅し道具・ゆすり道具を持たれているのはストレスにもなるし、行動の選択肢を著しく狭めることにもなりかねないのでアールー。世の中、そうそう良識的な人間ばかりで構成されているわけでもなく。
男、特に30歳以上くらいの中年男性は口を揃えて「男はわりとはっきりしてるけど、女同士の争いってネチネチ汚くてマジで怖い」とか勝手なことを言う。確かに女同士の喧嘩は殴り合う拳を持たない分、言葉・策・人脈を駆使した醜いものであるが、意外と平気で汚い手を使ってくるのは男であることも多々あるんですよ。しかも結構なエリートの。
⇒この続きは連載をまとめた単行本「おじさんメモリアル」で
【鈴木涼美(すずき・すずみ)】
83年、東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。09年、東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。専攻は社会学。「身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論」(幻冬舎)発売中。現在は日経新聞を退社し、執筆業を中心に活動。幻冬舎plusにて「愛と子宮が混乱中 夜のオネエサンの母娘論」を連載中。LINEブログはhttp://lineblog.me/suzukisuzumi/
(撮影/福本邦洋 イラスト/ただりえこ)’83年、東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。専攻は社会学。キャバクラ勤務、AV出演、日本経済新聞社記者などを経て文筆業へ。恋愛やセックスにまつわるエッセイから時事批評まで幅広く執筆。著書に『「AV女優」の社会学』(青土社)、『おじさんメモリアル』(扶桑社)など。最新刊『可愛くってずるくっていじわるな妹になりたい』(発行・東京ニュース通信社、発売・講談社)が発売中『おじさんメモリアル』 哀しき男たちの欲望とニッポンの20年。巻末に高橋源一郎氏との対談を収録 |
『おじさんメモリアル』 著者が出会った哀しき男たちの欲望とニッポンの20年 日刊SPA!の連載を単行本化 |
『「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか』 慶応大学環境情報学部卒。東京大学大学院学際情報学府修了。本書がデビュー作。 |
『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』 「お乳は生きるための筋肉」と語る夜のおねえさんの超恋愛論 |
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