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セックスフルネス思考おじさんの狂宴と淑妻の涙――鈴木涼美の「おじさんメモリアル」

「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは自らを饒舌に語るのか』(青土社)、『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』(幻冬舎)などの著作で「性を商品化する」女性たちの内面を活写し注目されている文筆家の鈴木涼美が、「おじさん」をテーマに日刊SPA!で連載する「おじさんメモリアル」第22回! 【第22回 華麗なるイチモツ】  私は今のところ結婚したことがないので世の奥様方が不倫報道に怒ったりセックスレスを悩んだりするのは言わば人ごとである。で、世の男性の多くは家庭でセックスレスになったり不倫を慎んだりする傍ら、夜商売の女の子やプロ愛人にお世話になるものなのであるが、ごくたまに家庭と夜商売を繋いでしまう大胆なおじ様というのがいるのである。  私がかつて身を置いていたアダルトビデオ業界というのはなかなかファンキーなところで、そこで仕事をしていると変な仕事の話というのが非公式に迷い込んでくる。Vの撮影、グラビア、サイン会などのイベント、マスコミ取材、一応公式な撮影会を表の仕事、とするならば、裏の仕事というべきでしょうか。  当時は単体よりのAV嬢が今のように自由に風俗などで働けないということもあって、なんでもかんでも名前をつけるのが好きな週刊誌が定義するパパ活やらギャラ飲みやらと同様の事態は、10年以上前には名前なき行為として私たちの周りに転がっていた。最近の嬢たちは上海やらマカオやらに出稼ぎデートにいくというのがお決まりになっているらしいが、当時は今ほど中国のお金持ちの存在感があったわけではなく、普通の日本のおじ様相手の高額の交通費をもらう飲み会や、ホテルありのお付き合い(諭吉つき)というのが主流で、多分器用な子たちはそういった場所で表の仕事と同等あるいはそれ以上の稼ぎを得ていた。要するに風俗店などに在籍していると何かと都合の悪い売れないグラドルやAV女優たちの自主風俗である。  私自身は業界内にそれほど親しい友達がいたわけではないが、どういうわけかあらゆるネットワークを持っている女子、というのがどこの世界にもいて、大学ではインカレサークルの女王、OLでは合コンクイーンのような存在であるが、AV業界にもどこからかそういう儲け話を持ってきては女の子を集める嬢というのがいた。で、たまたま、私が撮影の現場や事務所ではなくキャバクラ仕事の方で知り合ったAV嬢にそういうコーディネーター女子であるアコちゃんという子がいた。 ⇒この続きは連載をまとめた単行本「おじさんメモリアル」で 【鈴木涼美(すずき・すずみ)】 83年、東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。09年、東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。専攻は社会学。「身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論」(幻冬舎)発売中。現在は日経新聞を退社し、執筆業を中心に活動。幻冬舎plusにて「愛と子宮が混乱中 夜のオネエサンの母娘論」を連載中。LINEブログはhttp://lineblog.me/suzukisuzumi/ (撮影/福本邦洋 イラスト/ただりえこ)
’83年、東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。専攻は社会学。キャバクラ勤務、AV出演、日本経済新聞社記者などを経て文筆業へ。恋愛やセックスにまつわるエッセイから時事批評まで幅広く執筆。著書に『「AV女優」の社会学』(青土社)、『おじさんメモリアル』(扶桑社)など。最新刊『可愛くってずるくっていじわるな妹になりたい』(発行・東京ニュース通信社、発売・講談社)が発売中

おじさんメモリアル

哀しき男たちの欲望とニッポンの20年。巻末に高橋源一郎氏との対談を収録

おじさんメモリアル

著者が出会った哀しき男たちの欲望とニッポンの20年
日刊SPA!の連載を単行本化

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