自衛隊が「宇宙の平和」を守る!? マンガやアニメみたいな話が現実に
「自衛隊ができない50のこと 48」
1月27日に宇宙・サイバー・電磁波という「新たな領域」の防衛を担う「機能統合組織」を防衛省が検討しているという記事がでました。今後この問題について大規模な組織改編も始まります。いずも型護衛艦の空母化の話はよく聞きますが、防衛大綱で最も重要で緊急の課題は「宇宙・サイバー・電磁波」への対応です。「いずも空母化」はそのカムフラージュではないかとカンのいい人は気づいているかもしれません。
Huaweiの報道から、サイバーセキュリティについて心配する人は多いでしょう。サイバー環境を強化し防衛しないと市民生活や金融、経済等、重大な基盤を台無しにする危険があります。中国は10万人以上のサイバー攻撃部隊をもっています。
また、電磁波問題とは周波数の利用の問題です。先進国では携帯電話など様々な周波数の電波を使う時代になり、我が国の利用は官民入り乱れていて抜本的な改革を必用としているのです。
さて、最もわかりにくい「宇宙」の防衛について今回は説明しようと思います。
「とうとう宇宙防衛を考える時が来ました!」ってことです。そんな風にいうと「宇宙防衛だと? ふざけんなよ!」と言われそうです。しかし、残念ですが、真剣な問題です。アニメや漫画、SFなど虚構の世界で語りつくされた「宇宙防衛」が現実になる時代になってしまいました。これについてきちんと説明します。
星の見える雲のない夜空をみあげると飛行機ではない「明るい点」がゆっくりと移動して見えることがあります。これが人工衛星です。我が国の上空には多くの人工衛星が飛んでいます。早い段階で我が国は宇宙開発をしていましたから、我が国の上空の軌道は我が国の人工衛星で埋まっています。我が国の軌道を我が国が支配し管理できている状態の維持はとても重要です。人工衛星の耐用年数が過ぎた時に予算がなくその軌道に次の衛星が打ち上げられなければ、その軌道を予約している他国に譲らないといけないシステムがあります。民主党政府時代に蓮舫内閣特命担当大臣が事業仕分けでJAXAの予算をカットしましたが、軍事的にはその予算削減はありえないことだったのです。
人工衛星にはGPS、通信、電波、画像、弾道ミサイル監視などの役割があります。人工衛星は航空機や海上の船舶や弾道ミサイル等の動きを監視でき、制御・管制する情報源です。また撮影した画像を地上に送ることができます。米国は衛星からの探査機能等を利用して、北朝鮮のミサイル基地の監視や南沙諸島沖に中国が作っている人工島の監視画像を利用しています。我が国はそういった恩恵を受け、いち早くミサイル迎撃態勢をとることができます。人工衛星は地上を監視し、管制し、制御します。人工衛星がなければ国は守れません。ミサイル迎撃ができるのも人工衛星の恩恵を受けています。
人工衛星ネットワークは情報化社会の大きな力です。GPS機能は米国の全地表をカバーする測位人工衛星によるシステムです。その精度をあげるため我が国は2010年から「みちびき(準天頂軌道の衛星)」打ち上げ、2018年は4機が稼働しています。これで高精度の測定誤差の少ない測位情報が得られるようになりました。
我が国の測位を国産の人工衛星で運用していることが重要です。人工衛星からの情報を外国の意思で左右されては困ります。全世界の脅威を察知できる日米同盟は重要ですが、我が国周辺の測位については我が国が掌握できるようになりつつあります。
この「みちびき(準天頂軌道の衛星)」は詳細な測量ができます。それを使って物流の最短距離を割り出し、荷物の位置確認や、盗難車の追跡、航空機や船舶の正確な航行の支援、台風や災害時のバックアップ、測量ができるようになりました。建設機器の自動制御による情報化施工がはじまっているのです! 話題の自動運転システムもこの「みちびき(準天頂軌道の衛星)」があるから可能となってきたものです。防衛だけでなく、経済の新たな起爆剤としても重要な位置を人工衛星は占めています。
人工衛星は防衛力です
人工衛星は次世代の経済発展のカギを握る
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おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot
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『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』 日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる…… |
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