沖縄でも都市部の若者は苦手で飲まない!? 焼酎とは違う泡盛の魅力
― 30代が知らないと恥ずかしい! 今さら聞けないお酒のキホン第50回 ―
「泡盛(あわもり)」は主に沖縄で作られている蒸留酒です。米と麹菌が原料で、蒸留して貯蔵するなど、焼酎と似ています。実際、1983年までは「焼酎乙類」として分類されていました。しかし現在は、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律施行規則の第十一条の五で、米こうじ(黒こうじ菌)と水を発酵させたアルコール含有物を単式蒸留機により蒸留したものは、「泡盛」として規定されています。
そもそも泡盛と焼酎は別物なのです。上記のように泡盛は黒こうじ菌ですが、焼酎は白麹菌を使います。原料の米も、泡盛はほとんどがタイ米を利用しています。さらには、泡盛では米を全部米麹にしてから発酵する全麹仕込みをします。焼酎は米麹や麦麹を発酵させる1次仕込みから、途中で主原料の米や麦、芋などを仕込む2次仕込みを行うなど、工程も大きく異なります。
蒸留方法も特徴的です。ほとんどの泡盛は常圧蒸留を行います。一方、焼酎の中には減圧蒸留を行っているところがたくさんあります。原料を発酵させたもろみを熱して、水よりも先に沸騰するアルコール分を分離するのが蒸留です。常圧では水は100℃、アルコールは78.3℃で沸騰しますが、気圧を下げることでアルコールを40~50℃で沸騰させるようにするのです。すると、あまり加熱していない状態で蒸留できるので、原料のクセがあまり出ません。つまり、飲みやすいお酒ができあがります。
泡盛は一般的に、原料や仕込み、蒸留方法が原因で、焼酎と比べると濃厚で芳醇なお酒に仕上がります。香りも味も強く、もちろんとても美味しいお酒です。度数は43度、40度、35度、30度と銘柄によって異なります。アルコールが強くない人でも気軽に楽しめるように、「マイルド」と付いた25度前後の泡盛も販売されています。
アルコール度数60度にもなる銘柄もあるのですが、厳密には泡盛というカテゴリーに入りません。泡盛を名乗るには、度数が45度以下でなければいけないためです。そのため、ラベルには「原料用アルコール」や「スピリッツ」と記載されています。とはいえ、もちろん普通にお酒として飲めます。
この泡盛の60度版のお酒は「花酒」と呼ばれています。神事や献上品として使われる由緒正しいお酒です。さらに、この「花酒」を作っていいのは、日本最西端にある与那国島だけ。「花酒」として販売されているのは3銘柄。国泉泡盛の「どなん」、崎元酒造所の「与那国」、入波平酒造の「舞富名」です。筆者は、沖縄料理を食べながらどなんの60度をロックでいただくのが大好きでした。カクテルの材料にしたり、キリキリに冷やしてストレートで飲む方もいます。
もちろん、お酒すべてに言えることですが、例外にチャレンジしている作り手もたくさんいます。タイ米ではなく、地産地消を掲げてジャポニカ米を使ったり、泡盛でも減圧蒸留をしているところもあります。
またお酒なので、基本的には熟成させると美味しくなります。泡盛でも、甕や瓶に入れて寝かせることがあります。3年以上熟成させたものは「古酒」(くーす)として表記できます。
以前は、3年以上熟成させた古酒が50%を超えていれば、古酒と表記できました。しかし、2013年に泡盛業界が自主的に表記基準を決め、3年古酒と表示するには全量が3年以上熟成していなければならなくなりました。基準を透明化して厳格化することで、古酒の価値を高めるブランディング戦略のためです。
泡盛と焼酎の具体的な違いとは?
減少する出荷量。泡盛がもっと受け入れられるには……
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お酒を毎晩飲むため、20年前にIT・ビジネスライターとしてデビュー。酒好きが高じて、2011年に原価BARをオープン。2021年3月には、原価BAR三田本店をオープンした。新型コロナウイルス影響を補填すべく、原価BARオンライン「リカーライブラリー」をスタート。YouTubeチャンネルも開設し生き残りに挑んでいる
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