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GW中の高速道路利用を本気で抑えたいなら一般車の料金は一律5割値上げすべき

 政府は、GW中(4月29日~5月6日)、普通車以下が対象になっている高速道路料金の休日割引(3割引)を適用しないことと、SAPAの飲食店や土産物店の営業自粛をNEXCO各社に指示した。一方で物流には支障が出ないよう、ガソリンスタンドやシャワー設備は営業継続の方針だという。

NEXCO東日本発表資料より

 GW中の移動によって、新型コロナウイルスの感染が拡大するのを防止するためには、当然の措置だろう。というよりも、緊急事態宣言下、高速料金の休日割引が継続されていたこと自体がおかしい。  湘南など一部の観光地では、週末になると息抜きを目的に多くのマイカーが訪れ問題になっていたが、休日割引は「レジャーに出かけてください」という誘いそのもの。誘っていながら来るなというのは矛盾している。休日割引の停止は当然だし、そこから一歩進んで、今年のGW中は、高速料金を値上げすべきではないだろうか。

利用率93%のETCを使えば高速道路の課金コントロールは難しくない

 日本は諸外国と異なり、都市のロックダウンや外出禁止のような厳しい移動制限を課することはできず、自粛にゆだねられている。自粛の範囲内で移動量を物理的に抑えるなら、課金しかない。

休日割引なしと自粛要請で、果たしてどこまで移動を抑えられるだろうか……

 ただ、鉄道や航空機などの場合、一律に料金を上げると、医療従事者等必要な移動にも負担を強いることになり、難しい。しかし高速道路の場合、物流とレジャーを分け、レジャー(の可能性が高いクルマ)のみに課金することは可能だ。  現在、高速道路におけるETC利用率は約93%だが、ETCは車両情報とETCカードの情報をやりとりしている。ETC車載器はセットアップ時にナンバーの登録が必要。通過したクルマのナンバー情報は、カード情報とともにセンターに送られる。

ETCを駆使すれば、一般車だけに課金することもできる

 ナンバーを見れば、そのクルマの区分(軽から特大まで)だけでなく、自家用(ひらがなが「さ」から「ろ」まで)か事業用(ひらがなが「あ」から「こ」「を」まで)だけでなく、乗用(数字の頭が2、3、5、7)か貨物用等(それ以外)かも分類できる。レジャーに向かうのは、乗用自家用普通車および軽自動車・二輪車のみと考え、それだけを対象に値上げを行うことは可能だ。  今年行われるはずだった東京オリンピック・パラリンピックの期間中、首都高では、そこ(いわゆる一般車両)を対象に一律1000円の値上げが行われる予定だった。そういった料金の変更はプログラミングを変更するだけで可能。非ETC車に関しても同様だ。

本気で移動させたくないなら割引なしではなく値上げすべき

 GW中の息抜きレジャーの足としては、新型コロナウイルスへの感染をなるべく避けたいという心理が働くため、マイカーが使われる割合が高くなるはず。それを抑えるために時限的な料金の値上げを行うべきではないだろうか。  たとえばGW期間中、レジャーに向かう一般車の料金を一律5割増にすれば、かなり大きなブレーキになるはずだ。「政府はそこまで移動を止めようとしているのか」というメッセージ性も高い。「終息後は休日割引の拡大を予定」とアナウンスすれば、より効果は高くなるはずだ。

SAPAのテナントにも自粛要請を出しているそうだが……

 余談だが、クルマの譲渡などでナンバーが変わった場合、ETC車載器は再セットアップを行う必要があるが、実際には行われないケースも多く、ETCゲートもそのまま通過できてしまう。ただ、譲渡によって車種区分が変わることはほぼないため、実害は生じない。  かつて、軽自動車でセットアップした車載器を大型車などに設置しての不正通行もあったが、料金所にはカメラがあり、すべての通過車両のナンバーを記録している。そのため、悪質な車両は捜査の上検挙されたという過去がある。 取材・文/清水草一
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中
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