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西成の元日雇い労働者たちが作るクラフトビール「暴動エール」の味とは

西成でクラフトビールを作る

西成

高齢化した労働者達の受け皿となった西成は、労働者の街から福祉の街へと移り変わっている

 大阪市西成区で元日雇い労働者が造るクラフトビールが人気を集めている。その名も「西成ライオットエール」(※ライオットは「暴動」を意味する)。かつて、日雇い労働者による戦後最大ともいえる暴動にちなんでつけられたクラフトビールを製造しているのは、高齢者の介護や障害者の就労支援を手がける「株式会社シクロ」。  シクロの代表を務める山﨑昌宣氏に西成との関係や「ライオットエール」の誕生秘話を聞いた。 「出身は西成の隣の街ですが、西成に友人もいたので地元に近い感覚でした。卒業後は介護医療関係の仕事に就き、エリアマネージャーとして勤めていたのですが、当時は若かったことからあまり治安のよくないといわれるエリアを担当していました。  そのうちの1つが西成で元日雇い労働者の介護を請け負っていました。要介護者はお酒で身体を壊して障害がある方や、日雇いで働いていたけれど高齢になってドヤ(簡易宿所)を出た方などでした」 【画像をすべて見る】⇒画像をタップすると次の画像が見られます

オッチャンの一言と密造酒造りのプロ達

 その後、勤めていた会社が倒産し路頭に迷っていた山﨑社長。そんなとき、要介護者だった1人のオッチャンから『独立したらええやん』の一言をきっかけに、障害者の就労を支援する目的でカフェをオープンした。 「しかし、カフェは1年ほどで閉店してしまったんです。その後、2018年に就労支援の一環としてビール醸造事業を始めたのですが、それも利用者の障害者の方からの『俺たちに酒を造らせたらええんや』という一言がきっかけでした。当時、利用者達には内職など単純作業をやらせていたのですが、面白くないという声をよく聞いていたんです。  かつて西成では密造酒が醸造されていて、それに携わっていた利用者から『酒造りなら本気出すで』という声があったんです。僕としては『1度、やってみて失敗してみたらええねん』という気持ちのほうが強かったんですね。  最初から上手く行くよりも失敗して初めて僕たちスタッフの大変さや貴重さに気づいて分かることもあるだろう……と思い、とりあえずやらしてみようという気持ちでビール醸造事業を始めました」
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日本酒ではなくビール
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東京都出身。20代を歌舞伎町で過ごす、元キャバ嬢ライター。現在はタイと日本を往復し、夜の街やタイに住む人を取材する海外短期滞在ライターとしても活動中。アジアの日本人キャバクラに潜入就職した著書『底辺キャバ嬢、アジアでナンバー1になる』(イーストプレス)が発売中。X(旧Twitter):@ayumikawano

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