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園子温最新作で躍動する原石たちの下積み事情「早く食えるようになりたい!」

バイト脱却を目指す新人俳優たちの夢と情熱

『エッシャー通りの赤いポスト』ジャパンプレミア

映画『エッシャー通りの赤いポスト』ジャパンプレミアに登壇した原石たち

 鬼才・園子温監督が役者育成のワークショップを通じて自らインディーズ魂を取り戻した最新作『エッシャー通りの赤いポスト』(公開中)。映画出演を目指して、さまざまな人生を背負った人々がオーディションに集うという群像劇に、ワークショップで見出された新人俳優たちが全身全霊を懸けて挑む。  前回に続き、応募総数697名の中から選ばれた51名のうち、主要キャラクターを射止めた4人の新人俳優にインタビュー。アルバイト生活を続けながらも“俳優”という夢に向かって突き進む彼らのリアルな心情を聞いた。
小林監督に心酔する助監督のジョー役 小⻄貴大(こにし・たかひろ)28歳

小林監督に心酔する助監督のジョー役 小⻄貴大(こにし・たかひろ)28歳

鬼才のカリスマ映画監督・小林正役 山岡⻯弘(やまおか・たつひろ)39歳

鬼才のカリスマ映画監督・小林正役 山岡⻯弘(やまおか・たつひろ)39歳

狂気をみなぎらせるワケあり女・安子役 / 藤丸千(ふじまる・せん)27歳

狂気をみなぎらせるワケあり女・安子役 / 藤丸千(ふじまる・せん)27歳

俳優志望だった亡き夫の遺志を継ぐ女・切子役 黒河内りく(くろこうち・りく)22歳

俳優志望だった亡き夫の遺志を継ぐ女・切子役 / 黒河内りく(くろこうち・りく)22歳

俳優一本で食べていく難しさ

左から山岡⻯弘、小⻄貴大/映画『エッシャー通りの赤いポスト』場面写真

左から山岡⻯弘、小⻄貴大/映画『エッシャー通りの赤いポスト』場面写真

――前回は、オーディションに挑む時の心構えなどをお聞きしましたが、今回は、現在の暮らしぶりについて。現状、俳優一本で食べていくのは難しいですか? 小西:正直、演技の仕事だけでは生活していけないのが現状です。でも、お金のやり繰りが厳しい中でも自分への投資は不可欠だと思っているので、本作にも関わってくださった演劇講師のボビー中西さんのもとで、週1回は演技の勉強をさせていただいています。 ――アルバイト収入はどれくらいの比率を占めるんですか? 小西:月によってかなり違いますが、多い時はバイトが9割を占めることもありました。ただ、ありがたいことに、園監督の作品に出演したことで、以前より書類審査が通りやすくなっているので、これからが勝負だなと思っています。園監督や今作で共演した俳優仲間、さらには『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』(園監督のハリウッド・デビュー作)のスタッフ、キャストとも繋がることができましたし、海外の映画賞を受賞したことも大きな刺激になったので、日本はもとより、世界に通用するような作品にも出演できるよう頑張りたいなと思っています。 ――やっぱり下積み感とかってあるんですか? 小西:めちゃくちゃあります。本当にお金がなくて、ほとんど自転車移動です。東京の街中を自転車で通るたびに、「早く(俳優で)食えるようになりたい!」と毎日思っています。 ――他の方はいかがですか?言える範囲で結構ですが、これから俳優を目指す方の参考にもなるかと。 山岡:僕は、俳優業が厳しい時は、深夜、ヘルメットを被って、蛍光のベストを着て、仕事をしています。なかなか思うようにいかず、悔しい気持ちの時もあるんですが、そこの社長さんにとても良くしていただいていて、僕が「普段は役者をやっています」って言うと、「ジャンパーにサイン書いてくれ、いつか売れたら自慢するんだ」と励ましてくれたり、「お金がなかったら、いつでも前借りしていいからな」と声をかけてくれたり、「オーディション頑張れよ、ラテンのノリで元気よく行け!」と背中を押してくれたり…。凄くお世話になっているので、いつか本当に売れて、恩返ししたいなと思っています。
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新人女優の下積み事情は…?
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広告制作会社、洋画ビデオ宣伝、CS放送広報誌の編集を経て、フリーライターに。国内外の映画、ドラマを中心に、インタビュー記事、コラム、レビューなどを各メディアに寄稿。2022年4月には、エンタメの「舞台裏」を学ぶライブラーニングサイト「バックヤード・コム」を立ち上げ、現在は編集長として、ライターとして、多忙な日々を送る。(Twitterアカウント::@Backyard_com)

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