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政府は中小企業に“罰ゲーム”を科した。助成金の無利子融資は金利ゼロではない

コロナ禍の影響で、助成金を利用する企業や自営業者が増えている。まさに空前の補助金ブームともいえる昨今で、安易に補助金に手を出す危険性について「助成金は麻薬だ」と警鐘を鳴らすのが、経済評論家として活躍する上念司氏だ。助成金や融資を利用しまくる企業のリスクや、政府や官僚たちの思惑などについて、上念氏が解説する。 (以下は、上念司著『あなたの給料が上がらない不都合な理由』の一部を編集したものです)

国の助成金や無利子融資に潜む「罠」とは

上念司

上念司氏

今回のコロナ禍のパンデミックという緊急事態において、政府は雇用調整助成金や無利子融資の拡充、給付金などいろいろやっているように見えますよね。でも、これって国民が騒いだから渋々やっているようなものなんです。 無利子融資と気軽に言いますが、将来の売上が見込めない状況で債務を増やすのっていかがなものでしょう? 非常に勇気がいりますよ。だって、普通はそういう時、借金を増やしちゃダメですから。 しかし、2020年の緊急事態宣言の時、与党の政治家が「とにかく今は金利がいらないので借りてください」といった趣旨の主張をされていました。この人たちは経営が分かっているのでしょうか? コロナが何年続くか分からないのに、債務だけ増やしたらその後大変じゃないですか。 しかも、日本の経営者の場合、会社の借金の保証人をさせられているケースがほとんどです。コロナの無利子融資では個人保証が不要だとしても、それ以前の債務についてはだいたい個人保証がついております。 最悪、廃業するなら黒字倒産のほうがマシと考えれば、無利子融資で債務を膨らませることって罪作りな気がします。もちろん、急場を凌げば復活できるビジョンを持った経営者がいるなら話は別ですよ。大いに借金して、その後大儲けして借金を返済してください。

無利子融資は金利ゼロではない? 政府は中小企業に罰ゲームを科した

政府に言われるがままに無利子融資を増やした中小企業が、今後大ピンチに陥る可能性が出てきております。なんと、この無利子融資制度を利用した企業の3割は2022年1月時点ですでに債務の返済が始まっているのです。世の中がオミクロンパニックで短期的な売上すら見通せないのに、借金の返済ですか? なんと厳しい罰ゲーム!! そもそも、この融資、本当に金利ゼロではないんです。正確に言うと、融資後3年間は無利子。返済猶予期間も最長5年までとなっております。ただ、猶予期間を長くするほど、返済期間の後半に返済が集中して、負担が増しますよね? だから、返済負担を平準化するために、猶予期間は1年から2年ぐらいに設定している企業が多いとのこと。2020年に借りて、2年経ったら、2022年! 今年じゃないですか!!
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救済措置はまったくなし?
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1969年、東京都生まれ。経済評論家。中央大学法学部法律学科卒業。在学中は創立1901年の弁論部・辞達学会に所属。日本長期信用銀行、臨海セミナーを経て独立。2007年、経済評論家・勝間和代氏と株式会社「監査と分析」を設立。取締役・共同事業パートナーに就任(現在は代表取締役)。2010年、米国イェール大学経済学部の浜田宏一名誉教授に師事し、薫陶を受ける。リフレ派の論客として、著書多数。テレビ、ラジオなどで活躍中

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