ソーダストリーム、日本上陸から5年は「価値を伝える」ことを徹底した。日本市場の展望
日々のライフスタイルを送るなかで、シュワっとした爽快感や気分転換にぴったりな炭酸水。特にコロナ禍では炭酸特有の刺激を求め、おうち時間のお供にスーパーやコンビニで炭酸水を手に取る機会も増えたのではないだろうか。
そんななか、自宅の水を使って簡単に炭酸水が作れる炭酸水メーカーが「ソーダストリーム(SodaStream)」だ。
ソーダストリームは、最近生まれた新興の炭酸水メーカーに思えるが、実は1世紀以上も続く老舗企業。
1903年にロンドンで創業し、主に西ヨーロッパを中心に販路を拡大してきた。だが、特に拡大路線を視野に入れたマーケティング戦略は立てておらず、長きにわたってヨーロッパ以外の国へは進出してこなかったのだ。
日本にソーダストリームが上陸したのは2011年だが、「もともとヨーロッパに根付いていた炭酸水を日本に持ってこようという考えよりも、グローバル戦略の中でアジア圏におけるマーケット市場のひとつに日本が入っていた」と平野さんは説明する。
「2007年に『地球上から無駄なプラスチックごみをなくす』というビジョンを実現するため、もっと大きなマーケットに打って出ようという考えに変わり、グローバルへビジネスを拡大する意思決定を行いました。もちろん、炭酸水を飲むのはヨーロッパ人ですが、ポップソーダ(砂糖が入った炭酸飲料など)を多く飲むアメリカは、莫大な市場規模があり、大きな可能性があることに当時のCEOが着目したんです。
その流れで南米などポップソーダを好む地域を中心に、3年で12カ国から40カ国以上に進出するグローバル戦略を策定し、こうした枠組みのなかで日本のマーケットにも参入を決めたのが、日本上陸のきっかけになりました」
だが、日本に上陸した当初は炭酸水を飲む習慣がなく、ゼロから市場を創っていく必要があった。現在ではスーパーやコンビニ、自動販売機などで炭酸水は普通に購入できるものの、2011年ごろは炭酸水が今ほど普及しておらず、一部の酒屋や高級スーパーでしか扱っていなかったのだ。
もともとない市場ゆえ、需要の喚起をしていく上で「2つの軸で訴求を行い、炭酸水が日本のライフスタイルに根付くような働きかけを行った」と平野さんは話す。
「ひとつは『飲み方の提案』です。ヨーロッパでは、普段飲んでいる水にガスを入れて炭酸水を作るライフスタイルが自然と根付いています。一方、日本には家庭で炭酸水を作る習慣がなかった。そこで、『そんな賢い水の飲み方があるんだ』という気づきを与えるようなきっかけとなる訴求を行いました。まずは新しい水の飲み方を提案していくことで、需要の喚起に努めたんです。
そしてもうひとつは、すでに日本に根付いている食文化に注目しました。炭酸水でご飯を炊いたり天ぷらを揚げたりといった、すでにあるメニューの中に炭酸水をひと手間加えるだけで料理が美味しくなるというアプローチを行ったんです」
ソーダストリームの最初の入り口としては、海外で炭酸水を飲んだことがある人や海外文化に比較的触れていた人が、いち早くソーダストリームに関心を示したという。
「その人たちから影響を受けて口コミで広がったり、百貨店の催事出店の際に販売員がデモンストレーションを通じてソーダストリームの魅力を伝えたりと、徐々にそれを持つ意義が浸透し、潜在化していた需要を具現化させていきました。さらにマスメディアが取り上げ始めたことで、認知が広がっていったんです」
2011年に日本上陸して以来、「家庭で美味しい炭酸水を作る」という習慣を生み出し、炭酸水ブームをリードしてきたブランドといえよう。
日本における炭酸水トレンドの変遷やコロナ禍で顕在化したニーズについて、ソーダストリーム株式会社 マーケティング部長/ディレクターの平野幸恵さんへ話を聞いた。
2007年のグローバル戦略が世界展開を加速させた
炭酸水を飲む習慣がなかった日本で行った啓蒙活動とは?
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている
記事一覧へ
記事一覧へ
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ