テレ朝社員が“三浦瑠麗氏を訴えた”理由「17万人以上に秘密を暴露された」
取材は奇妙な形で始まった。出版社の応接室、席に着いた担当編集者が「なにか飲み物を買ってきましょう」というと、その男はこう切り出した。
「いや、もう買ってきてあります。いえね、番組の制作現場にいた時の癖で、自分が人数分用意しないといけないと思って……」
こうして、彼が手ずからテーブルに並べたよく冷えたコーヒーをすすりながら、インタビューは始まった。
いま、先頃出版された一冊の手記がにわかに注目を集めている。『孤闘 三浦瑠麗裁判1345日』(幻冬舎)という本だ。テレビ朝日の社員が、国際政治学者・三浦瑠麗氏との裁判闘争に完勝した顛末を記した手記だ。
その著者が、西脇亨輔氏。元アナウンサーで現在は同社法務部に所属する一社員である。「元アナウンサー」とはいえ、会社員でしかない男が会社の看板番組である『朝まで生テレビ!』のレギュラー出演者であり、巨大な発言力を持つ人物を訴えた顛末。それは、意図してか否か、SNSとメディアが生み出した虚像の正体を露わにしている。
いったい、西脇氏はなぜ三浦氏を訴えたのか。始まりは2019年4月の『週刊ポスト』のスクープだ。当時『朝まで生テレビ!』のMCを務めていた、同局の元アナウンサー村上祐子氏(当時は報道局政治部)が、夫と別居しNHKの男性記者と同棲していることを報じるものだった。その夫というのが西脇氏である。
当時、結婚10年目にして村上氏から離婚を切り出されて訴訟中だった西脇氏。しかし、妻が既に別の男性と関係を持っているというのは、まったく知らないことだった。
大きなショックを受け酒量も増えた西脇氏。だが、本当の衝撃はその後だった。それが、2019年4月23日の三浦氏のツイートだ。
「そもそも何年も別居し離婚調停後、離婚訴訟係争中の人を不倫疑惑とする方が間違い。新しいパートナーと再スタートを切り子供を作ることさえ、離婚しにくい日本では難しい。これは本来多くの人が抱える問題のはずなのに。村上祐子さんを朝まで生テレビからおろすべきではない。」
なぜ三浦瑠麗氏を訴えたのか?
衝撃を受けた「三浦氏のツイート」
ルポライター。1975年岡山県に生まれる。県立金川高等学校を卒業後、上京。立正大学文学部史学科卒業。東京大学情報学環教育部修了。ルポライターとして様々な媒体に寄稿。著書に『コミックばかり読まないで』『これでいいのか岡山』
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