子供部屋で勉強するのは日本だけ…一級建築士が指摘する「日本の子供部屋がネガティブな影響を及ぼす」理由
こんにちは、一級建築士の八納啓創と申します。会社員の方から上場企業の経営者宅まで、住む人が幸せになる家をテーマにこれまで120件の家づくりの設計に携わってきました。『日刊SPA!』では、これまでの経験を生かし、「これからの時代に必要な住まいの姿」をテーマにお伝えしていきます。
さて、日本人には、「子供部屋に関して正しい知識を持っている人」が非常に少ないと実感しています。そこで今回お伝えしたいのは、「子供部屋が“実はネガティブな影響を及ぼしている”」ということです。
その理由をお伝えしていきましょう。
どんな部屋で子供時代を過ごしたか覚えていますか? 一人部屋だった人、兄弟と同じ部屋だった人、子供部屋自体なかった人など、事情は様々だと思います。
21世紀に入ってからは、自分の部屋を持つ子供が多くなり、“一人一部屋”というのも当たり前になってきました。
しかし、それと同時に、成人以降も親元で暮らし続ける「ニート」や、「パラサイト・シングル」という言葉も生まれました。引きこもった子供が社会と断絶した結果、経済的困難に陥る「8050問題」も見逃せない社会問題です。
このような高度成長期時代には見られなかった現象が、ここ数十年で顕著になったのです。一体なぜなのでしょうか?
これまで私は多数の家づくりに携わりながら、子供部屋の歴史を探求して紐解いてきた結果、一つの事実にたどり着きました。そしてそれこそ、「多くの子供を弱体化させる原因」にもなっているのです。
まず、「もともと日本には子供部屋が存在しなかった」という点に着目しましょう。
昔は、家族みんなが同じ部屋で起き、布団を片付けて、ちゃぶ台を出し、日中そこで暮らす。そして、夜になると、ちゃぶ台をしまい、布団を敷いて寝る……というライフスタイルが普通でした。
田舎に行くと、畳の間のふすまを開けるとさらに畳の間が続く……というように、「どこが誰の部屋」と明確に決められてはいませんでした。つまり現代の日本における子供部屋が、ほとんどなかったことがうかがえます。
では、いつ日本に子供部屋が誕生したのか。戦後間もない1950年代にきっかけが訪れます。
現在、「3LDK」というように、「3つの部屋とリビングダイニングキッチンのある間取り」が広く普及しています。これは当時のアメリカの間取りを導入した時に広がったもの。そして、3つの部屋の一部が子供部屋として普及していったのです。
「多くの子供を弱体化させる原因」は…
子供部屋は「アメリカの間取りを導入」がきっかけ
1970年、神戸市生まれ。一級建築士、株式会社G proportion アーキテクツ代表取締役。「地球と人にやさしい建築を世界に」をテーマに、デザイン性、機能性、省エネ性や空間が人に与える心理的影響をまとめた空間心理学を組み込みながら設計活動を行っている。これまで120件の家や幼保園、福祉施設などの設計に携わってきた。クライアントには、上場会社の経営者やベストセラー作家をはじめ「住む人が幸せになる家」のコンセプトに共感する人が集い、全国で家づくりを展開中
記事一覧へ
記事一覧へ
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ