「クスコの観光バスで出会って」国際結婚、夫婦が群馬の元“置き屋”でゲストハウスを始めるまで
ゲストハウスを営むような人は大の旅好きで世界中を旅した経験を持つ人が多い。群馬県桐生市で置き屋を改装した「OKIYA GUEST HOUSE & TAPAS BAR」を夫婦で営む高橋裕子さんとアルゼンチン人のガブリエル・プラウルさんもそうだ。
2人が出会ったのはペルーのクスコである。裕子さんはペルー人の前夫との間にもうけた娘と前夫の連れ子だった娘の2人といっしょに観光バスでクスコの遺跡巡りをしていた。
その車内で娘たちとスペイン語で会話していると、裕子さんの隣に座っていた男性が声をかけてきた。
「君、スペイン語を話せるの?」
それがガブリエルさんだった。そこからは彼も交えて4人で遺跡巡りをし、そのあとはどちらからともなく食事に誘い、いっしょにダンスもした。「はじめて出会った日から彼にはなにか運命的なものを感じていました」と裕子さんは振り返る。
その後、裕子さんは日本、ガブリエルさんはアルゼンチンとそれぞれの国に帰るが、2人は離ればなれになってもメールで連絡を取り合った。そして最初の出会いから数年後、2人はメキシコのリゾート地であるロスカボスで再会。そこで1週間いっしょに過ごした。真剣にお付き合いしようという話になったのはそのときだった。
日本とアルゼンチンの遠距離恋愛がスタートした。メールでこまめに連絡を取り合い、ときおり、お互いの国まで会いに行ったりもした。が、その交際は決して順風満帆ではなかった。日本とアルゼンチンは地球のほぼ真裏である。そのあまりの遠さに、もう無理かも……と挫けそうになることもあった。
裕子さんがアルゼンチンの首都ブエノスアイレスにあるガブリエルさんのアパートを訪れたとき、2人の今後について真剣に話し合った。これからも交際を続けていくには、どちらかが相手の国に移住するしかない……。それは簡単な決断ではなかった。
ようやく答えが出たのは翌年のことだった。ガブリエルさんはカバン2つだけを持って来日した。彼はアルゼンチンに家族や友達がたくさんいたし、安定した職にも就いていた。それらすべてを振り切り、裕子さんと結婚し、彼女の出身地である桐生でいっしょに生きていくことを決めたのである。
2人は桐生で新しい仕事を立ち上げることにした。裕子さんが考えていたのはいろんな国を旅する中でその魅力を知ったゲストハウス、そしてガブリエルさんが考えていたのはワインと地中海料理を提供するタパスバーの開業である。
そのための物件探しに奔走した。ぴったりの物件が見つかったのはファミレスで食事したときのこと。その駐車場から見えた趣のある古民家に2人とも一目惚れした。売りに出されていたのですぐにオーナーと連絡を取って内覧し、翌月に契約した。
その古民家は築100年以上も経っており、その昔、桐生が花街として栄えていた頃に多数の芸者を抱える置き屋として使われていたものであるという。かなり老朽化が進んでおり、雨漏りをする箇所もあったが、きれいにリノベーションした。そして2020年9月、1階がタパスバー、2階がゲストハウスになった「OKIYA GUEST HOUSE & TAPAS BAR」をオープンした。
あいにくコロナ禍の真っ只中でのオープンになってしまったが、外国人を中心に徐々にお客は増えていった。裕子さんによると、これは「夫の人柄もさることながら、彼の行動力のおかげである部分が大きい」という。
だが、そのオープンに至るまでには2人の紆余曲折のラブストーリーがあった。
日本とアルゼンチンの遠距離恋愛
置き屋として使われていた古民家をリノベーション
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バイオレンスものや歴史ものの小説を書いてます。詳しくはTwitterのアカウント@kobayashiteijiで。趣味でYouTuberもやってます。YouTubeチャンネル「ていじの世界散歩」。100均グッズ研究家。
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