「斜陽のボウリング業界」でも関係ナシ。創業51年の老舗「笹塚ボウル」は“地域の社交場”になっていた
国民の“定番レジャースポット”として地位を築いてきたボウリング場。人々のライフスタイルや趣味・嗜好の多様化に伴い、その利用人口は全国的に減少している。経営の悪化や建物の老朽化によって閉店を余儀なくされるボウリング場も多い一方、昨年に創業50周年を迎えた老舗として知られるのが「笹塚ボウル」だ。
斜陽と言われるボウリング業界の中で生き残ってきた経営戦略について、笹塚ボウルを運営する株式会社京王興産 代表取締役社長/CEOの財津 宜史さんに話を聞いた。
ボウリング場の閉鎖ラッシュが相次ぐなか、今でも営業を続けているのは「自分が誰よりもボウリング場が好きだから」と財津さんは述べる。
「ボウリングが好きなわけではなく、“ボウリング場”が好きなんですよ。笹塚ボウルは祖父が始めたボウリング場で、母親が2代目を継ぎ、僕は3代目にあたります。2000年初頭くらいから、笹塚ボウルで働くようになりました」(財津さん、以下同)
財津さんは、飲食店や他のボウリング場で数年間勤務したのち笹塚ボウルに入社したが、当時は売り上げが低迷していたという。状況を打破するため、飲食の売り上げ強化を目的とした設備リニューアルを2000年代中盤に行った。
「リニューアルのコンセプトに掲げたのは『レストランの中にあるボウリング場』でした。各レーンにあるボウラーズベンチで食事やお酒を提供したのは、おそらく笹塚ボウルが先駆けだったと思います」
だが当時は、ボウラーズベンチでの飲食がタブー視されていた。
「ボウリングシューズの裏は、ボールを投じた際にかかる力を逃がし、膝の負担を軽減するために、滑りやすいフェルト素材が張ってあります。 もし、シューズの裏に水滴が付くとスライドできずに転倒してしまう。なので、ボウラーズベンチには水滴のあるものを持ち込んではいけないというのが常識でした」
そんななか、財津さんは笹塚ボウルのボウラーズベンチを「ソファに替える」という試みを提案。ソファであれば水滴が落ちても染み込むため、ボウリングシューズの裏に水滴が付く心配はない。しかし、社内からは「ソファにすると長居してボウリングをしなくなるのではないか」という反対意見も多く挙がったという。
「現在、笹塚ボウルの運営責任者を務めているスタッフとは『ボウリング場を舐めているのか!』と言い合いになりました。それでも、最終的には先輩方も僕の意志を尊重してくれたというか。ボウリング場が減ってきて、客単価を上げるには『飲食機能を充実させることもひとつの方法』だと、先輩方が認めてくれたのはすごく感謝しています」
飲食機能を充実させ、ボウリングのゲーム代や貸靴代に頼らない収益構造を強化したことで、笹塚ボウルの経営状況は改善されたのだ。
老朽化に伴うリニューアル費用回収のために飲食機能を強化
「ボウリング場を舐めるな」社内からの反対意見も
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている
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