異業種交流会を全然楽しめない理由とは?
―[山田ゴメス]―
普段、仕事ではなかなか出会えない、違った業種で働く人たちが一同に集まり、ビジネスにリア充に……さまざまな情報を交換し合う異業種交流会。今でも行われるところでは、さかんに行われているようだ。僕、ゴメス記者もたまーにお呼びがかかったりして、気が向いたらたまーに顔を出したりもする。ライターであり、記名原稿もこなす、「文筆業」という肩書きを持つ僕なんかは、異業種という意味で、程よく「異」なんだろう。だが、顔を出すごとに感じる、ちょっとした違和感の正体とは、はたして?
近ごろは、節約なのか自分のお洒落ライフを見せびらかしたいのか、ホームパーティ形式のものも少なくない。そこで、申しぶんのない肩書きを持つ男女が、金に糸目を付けない“こだわり料理”に、ヴィンテージワインとかを添え、ふるまったりするのだ。
こういう場で、参加者がそこそこ喜びそうな、ちょっとサブカルめいた話題をふりまき、社交的な人間ぶるのは苦手ではない。でもいつも、心のどこかで居心地の悪さを感じてしまっている僕がいる。なんで……? じっくりと分析してみた。
(1)“異業種”のすそ野が案外にせまい
なんだかんだ言って、“異業種”をうたっているわりには、その会に参加できる職種を選別しちゃっているのだ。一度顔を出した某交流会の参加者は官僚(キャリア)、外資系証券トレーダー、ハイファッション系雑誌の女性編集者(眼鏡の形は六角形)、貿易会社の社長、大手総合商社石油担当……、といった蒼々たる面々。エロも書く文筆業者(僕)はギリギリセーフ。AV男優だとおそらくアウト(加藤鷹は除く)。
ちなみに、この会で大手商社マンから、「一人で組織に入らず、フリーでやっていくって、すごいですよねー! ボクなんか絶対に無理ですよ」と言われ、思わずイラッとしました。
(2)“異業種”の横幅はある程度あっても、タテ幅がない
上記の面子を見てもおわかりのとおり、結局は同じくらいの収入を得ている人たち同士が集まって、ごちょごちょやっているだけなのである。そんな場に、なぜ僕が呼ばれるのかといえば、単に僕のような仕事に就く者がいったいどのくらい稼いでいるのか、相手からすれば見当もつかないからにほかならない。その会に参加するときだけ、高そうな洋服着ていけば誤魔化せるわけだし。あと、“フリー”という、もうひとつの肩書きに対する組織人のあこがれも否定できない。だったら、いっそのことホームレスも呼んじゃえば、もっといろんな興味深い話も聞けるだろうに……。だが、そこまでの器のデカさはないもようだ。
(3)自分を紹介されるとき、やたら全身がむずがゆい
“自分が連れてきた人はすごいんですよー”とアピールしたいのか、僕を誘ってくれた人が、僕のことを皆さんに紹介するとき、ずいぶん盛られがちな修飾をされてしまうのだ。たとえば、こんな具合に。
「この山田ゴメスさんは、SPA!とかVoCEとかの雑誌で原稿を書いていて、書籍もいっぱい書いていて、ベストセラーもバンバン出しているんですよ」
一応断っておくが、僕はベストセラーなんて出したこともないし、この紹介者の前で「ベストセラー出したことあります」とも一度たりとて言ったことはない。そういうときは、とりあえず、「いやいや、そんなたいそうなもんじゃないですよ……」と、小声でやんわり否定するようにしている。
(4)誰もが野心をみなぎらせているわりには、さほど仕事につながらない
たぶん、“今日はいろんな職業の人と知りあえた”ってことで満足しちゃうんだろう。名刺を交換して、「また飲みましょう!」だとか「今度は仕事で!」だとか、ほろ酔い気分で口約束して解散。そして、そこでいただいた名刺の大半は名刺入れのなかで眠り続け、いずれ「これ、誰だっけ?」と、無情にゴミ箱へと“粛正”されてしまうのであった。
というわけで結論! 普通に飲んでても、いろんな仕事をしている男女はおのずと集まってくるし(むしろ同業種だけのプライベートな飲み会のほうが、めったにない)、さらにはウチの草野球チームのほうが、ずっと横にもタテにも職業的な広がりがあると思う。つまり、「酒」と「野球」という共通言語でつながる“異業種交流会”のほうが自然で健全で、よっぽど居心地がよい、ということだ。<取材・文/山田ゴメス>
【山田ゴメス】
1962年大阪府生まれ。マルチライター。エロからファッション、音楽&美術評論まで幅広く精通。西紋啓詞名義でイラストレーターとしても活躍。日刊SPA!ではブログ「50にして未だ不惑に到らず!」(https://nikkan-spa.jp/gomesu)も配信中。現在「解決!ナイナイアンサー」(日本テレビ系列)(http://www.ntv.co.jp/99answer/)に“クセ者相談員”として出演。『クレヨンしんちゃん たのしいお仕事図鑑』(双葉社)も好評発売中!大阪府生まれ。年齢非公開。関西大学経済学部卒業後、大手画材屋勤務を経てフリーランスに。エロからファッション・学年誌・音楽&美術評論・人工衛星・AI、さらには漫画原作…まで、記名・無記名、紙・ネットを問わず、偏った幅広さを持ち味としながら、草野球をこよなく愛し、年間80試合以上に出場するライター兼コラムニスト&イラストレーターであり、「ネットニュースパトローラー(NNP)」の肩書きも併せ持つ。『「モテ」と「非モテ」の脳科学~おじさんの恋はなぜ報われないのか~』(ワニブックスPLUS新書)ほか、著書は覆面のものを含めると50冊を超える。保有資格は「HSP(ハイリー・センシテブ・パーソンズ)カウンセラー」「温泉マイスター」「合コンマスター」など
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