『まどか☆マギカ』は“契約”が持つ意味やリスクをわかりやすく伝えた作品
アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』にどっぷりハマった論者たちが作品の魅力や秘密を語り尽くす!
磯崎哲也(公認会計士)
◆「まどか☆マギカ」とは日本人の契約観を変えうる物語である
「インキュベーター」がキーワードとして登場する作品ですが、ベンチャービジネスの世界でも設立したてのベンチャー企業を支援するインキュベーターは非常に重要です。
ただこの物語のキュゥべえ、つまりインキュベーターは、医者と患者、弁護士とクライアントの関係のような、圧倒的な情報の非対称性のもと、まどかたちに契約を勧めてきます。彼は嘘は言ってないんだけど、嘘を言わなければいいかというとそうではない。契約に伴うリスクをきちんと説明していないので、現代社会の感覚からすると、かなり問題がありますね。知人の弁護士も「『まどか』は金融商品取引法の講義にも使える作品だ」と話していました。
まどかは途中の決断こそ煮え切らないし、考えが甘いようにも見えますが、結果的には彼女が一番よく考えて契約しましたよね。日本は欧米に比べて契約への意識がまだまだ希薄な国ですが、この作品は契約というものが持つ意味やリスクを誰にでもわかりやすく伝えられる非常に優れた作品だと思います。
魔法少女はいろいろな願いを胸に契約すると同時に、その対価を支払うわけですが、起業家もまさに魔法少女と似た境遇だと感じます。世間からは金儲け至上主義のように思われがちですが、私利私欲だけだと中小企業にはなれても、ある一定以上の企業にはなれない。シリコンバレーでも日本でも、お金だけを追い求めて成功してる人ってあんまり見ないんですよ。「世の中をいい方向に変えるぞ」といった大きなビジョンを持つリーダーこそが、社会を変えるような企業を生み出すんですね。
無自覚で幼かったが、自分の宿命に気づき、覚悟を決めて主体的に選択していくまどかの姿は、学生起業家のつくった会社が世界的企業にまで成長するような壮大さがあります。他の魔法少女の願いも決して利己的ではないんですが、結果として、まどかの願いが最もスケールがデカかった。
日本も今、事業に失敗しても事業家が「魔女」に変わらないシリコンバレー型の仕組みに変化しつつあります。リスクを正しく認識して壮大な目標にチャレンジする起業家たちが後悔しない社会に変えたいですね。
【磯崎哲也】
公認会計士・税理士・システム監査技術者。人気ブログ「isologue」(http://www.tez.com/blog)でも知られる。著書に『起業のファイナンス ベンチャーにとって一番大切なこと』(日本実業出版社
(C)Magica Quartet/Aniplex・Madoka Partners・MBS
― 大人気アニメ『まどか☆マギカ』の正体【4】 ―
取材・文/野口智弘 久保内信行(タブロイド) 江口裕人(本誌)
撮影/山川修一(本誌)
『起業のファイナンス ベンチャーにとって一番大切なこと』 磯崎哲也が教える、成功する会社の作り方 |
この特集の前回記事
ハッシュタグ