「嫌な思い出も笑えるように描けば救われる」訪問販売の経験を漫画にした理由
「訪問販売」という言葉を聞いて、いい顔をする人はあまりいないだろう。突然家のインターホンを鳴らされて、頼んでもいないのに欲しくもない商品の営業を始める訪問販売員。しかし、そんな「嫌われ者」の仕事をやる人間にも、その人間なりの生活や人生がある。
『週刊ヤングマガジン』で連載中の『契れないひと』は、子供英会話教室の訪問販売員・野口舞子を主人公にしたギャグ漫画だ。“ダメダメ勧誘員”の野口は、いつも客や上司からひどい目に遭いながらも仕事を続けている。
著者は『夫のちんぽが入らない』のこだま氏や『死にたい夜にかぎって』の爪切男氏などが書いていたことでも有名な文芸同人誌『なし水』主宰のたかたけし氏だ。15年におよぶコンビニバイトを経て漫画家デビューした、たかたけし氏が、いま「訪問販売」をネタに漫画を描く理由とは。
――本作の連載が決まったのは、漫画投稿サイト「DAYS NEO」に載せていたエッセイ漫画が担当編集の目に留まったのがきっかけだったと第1巻のあとがきにありました。
たかたけし(以下、たか):そうですね。投稿し始めたのが、ちょうどそのサイトができたばかりの頃だったんですよ。今なら人が少ないから見つけてもらえるチャンスなんじゃないか、と思って。
――どういう作品を載せてたんですか。
たか:基本は自分の家族のことなどを描いたエッセイ漫画です。ただ、その中でひとつだけ過去の営業の経験をベースにした創作漫画があったんですね。それがいいと言われて声をかけられたんです。そこから約1年間、何度もネームを描いては直しながら、最終的に『契れないひと』という作品になりヤンマガ連載が決まった。正直、今でも嘘みたいです。
――担当編集には、最初の創作漫画の具体的にどこが刺さったのでしょう。
たか:おじいさんにファイルを投げられて、それが鳥のようになって飛んでいく場面を褒められました。あれがなかったら声をかけられていなかったかもしれない。あと、当時言われたのは「笑えるけど、哀愁があるのがいい」と言われましたね。自分では他と比べて何がよかったのか、よくわからないんですけど。
――哀愁はたしかにありますね。ギャグ要素がふんだんに盛り込まれている一方で、「飛び込み営業」という辛い仕事を辛い状態のまま描いているから、笑っていいのか戸惑う瞬間もあります。
たか:正直、最初に担当編集に「営業をテーマに作品を描きませんか」と言われたとき、ちょっと悩んだんです。僕にとってはとにかく辛くて仕方のなかった記憶だから、「お仕事漫画」として描く自信はない。自分も辛いだろうし、これを素晴らしい仕事のように描くことはできないと思って。でも、たとえば嫌な思い出をちょっとは笑えるように描けば、自分の記憶も救われるかもしれない。それならできるな、と描く決心をしたんです。
――実際の仕事は笑えるようなものではなかったんですね。
たか:作品よりもずっとひどかったですよ。僕は辛くて10か月くらいで辞めましたけど、それでも散々な思い出でした。やっぱり僕らが訪問する相手は、望んで待っている人たちではないので、ひどいことをたくさん言われるわけです。泣き出す人もいます。ただ、続けているうちに、だんだんと麻痺してきてしまって、何を言われても何も感じなくなくなる。
「辛かった営業時代」が目に留まりデビュー
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