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「日本の悪口を言う奴は反日だ」と叫ぶ人たちが取り違えていること/鴻上尚史

歴史

※写真はイメージです

「歴史戦」のトリックに 取り込まれないために必読の一冊

 気がつくと、意外に身近な人が、平気で「○○人はとんでもない」とか「○○人は信用できない」なんて言い方をしていたりします。  そういう一律のレッテル貼りの言葉を聞くたびに、心を痛め、この現状はヤバいなあと思っていました。  だって、「青森県人は汚い」なんて言い方をしたら(もちろん、何県でもいいのですが)、自分がどんなにムチャなことを言っているか分かると思います。住んでいる地域で、そこの人達全員の特徴をまとめられるわけないのです。  でも、これが国になると、平気で言う人が出てくるのです。どういう本を書けば、この悲しい傾向がなくなるのかなあ、と思っていたら、ものすごく素敵な本と出会いました。 『歴史戦と思想戦――歴史問題の読み解き方』(山崎雅弘/集英社新書)です。  なんだか「歴史戦」という言い方が、一部の人達の間で活発に使われているそうです。  それは、たとえば、慰安婦問題や南京虐殺問題などが「単なる歴史認識をめぐる見解の違い」ではなく「戦い」だという意識のもと、「日本と外国の戦いなら、日本はそれに勝たなくてはならず、勝つために全力をつくさないといけない」という考え方です。  それはつまり、歴史研究ではなく、運動家の戦い、ということです。  そうすると「事実はどうだったのか」ということより「どう勝つか」ということが重要になります。 「○○人はとんでもない」という言葉もまた、「歴史戦」の中に出てくる言葉のひとつになります。  まず筆者は、この本で、「『歴史戦』でよく使われるトリックに取り込まれないためのヒント」として、「『日本』と『大日本帝国』と『日本国』の意味の違い」を確認した方がいいと言います。  大日本帝国は、1890年(憲法施行)から1947年までの57年間、この国を統治しました。日本国は、1947年の憲法施行から、現在で73年目です。 「どちらも「日本」という時代を超越した包括的な国家の概念においては、ごく一部でしかありません」
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「自虐史観」の「自」とは何か
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