ネット選挙での「リスク」。各党の対応策は?
日本では「初」の試みとなるネット選挙が解禁され、初めての週末を迎えた。各候補とも見よう見真似でネットを活用しようと、街頭演説の動画をアップしたり、朝方まで自身の訴えたい政策論をツイッターで論じるなど躍起になっている姿が目につくが、これに先立つ公示前の6月25日、衆院議員会館内では「新しい選挙のカタチ。」と題された討論会が開かれていた――。
ニコニコ動画でも中継されたこの討論会には、与党・自民党からは平将明、福田峰之両衆院議員が、民主党からは今回“改選組”になる鈴木寛参院議員(東京選挙区)が、みんなの党からも松田公太参院議員らがそれぞれ参加。パネリスト陣には、ジャーナリストの田原総一郎氏や元NHKアナウンサーの堀潤氏ら豪華な顔ぶれが揃った。
「これまでの選挙はクローズだったので、行く先々でまったく違うことを言う候補や、ポスターと実際のビジュアルが全然違う候補も少なくなかった。ネット選挙の最大のメリットは、実態が浮き彫りになること。候補者は“リアル”に近づかざるをえないでしょう。これまではポスター貼って、ただ名前を連呼して当選してきた候補はちゃんと落選するし、『こんな人を公認してたの!?』と政党にも厳しい目が向けられるので効用は大きい」
普段からツイッターなどネットメディアを使いこなしてきた平氏がこう話すように、有権者の側から見れば、ネットを介してより多くの情報が集められることになり、取捨選択の幅が格段に広がるのは嬉しい限りだ。
「政党や候補者の比較が容易になる」「候補者と選挙民の双方向の意見交換が可能になる」「低コストで選挙運動ができるので立候補のハードルが低くなる」など、ネット選挙がもたらす“メリット”の部分は大いに期待されるところだが、その一方で、「なりすまし候補の出現」や「匿名による候補者の誹謗中傷やネガティブキャンペーン」といったネット社会特有の“リスク”を、選挙に臨む当事者たちがどうマネジメントしていくかも問われる戦いになりそうだ。ネット選挙に向けての各党協議会で平氏とともに共同座長を務める鈴木氏は討論会の中でこう「防御策」について話していた。
「ネット企業と組んで、各党の政治家が一括で登録し、『(このアカウントは)本物の議員ですよ』と証明されるサービスをすでに受けています」
選挙期間中の「炎上リスク」についても、各党ともすでに対応策は練っているようだ。
「誹謗中傷に対しては、政策についてのものなら反論すればいいし、人格攻撃の類には削除要請すればいい。落選運動にしても、ネット選挙では連絡先を明かさなければならない。これまでのように、(怪文書や中傷ビラを)誰がやっているのかわからないよりは、よほどいい。ネット選挙には一長一短があるが、有権者とキャッチボールできるメリットのほうが大きい。デメリットへの対策は各党が講じればいいわけですから」(福田氏)
この日の討論会では、参加者の一人、タリーズコーヒーの創業者でもある松田氏を批判する“弾幕”(コメント)が流れるひとコマもあったが、日頃からネットに親しんでいるせいかまったく動じるそぶりはなかった。
「今、『タリーズ! ココアまずいぞ!』って(弾幕に)出てきたけど、こうしたことが重要。なぜなら、これを受けて私が経営陣に伝えることができるわけですから。こういうソーシャル・リスニングがネット選挙では可能になるんです。ただ、先の東京都議選では、ある政党が私の応援演説の一部を切り取って、炎上させようとしたこともあった。これもネット選挙下では気をつけなければいけない」(松田氏)
今回討論に参加した国会議員は、ネット選挙のデメリットよりも得られるメリットに期待しているようだったが、これから選挙戦終盤に向け想定外の「炎上劇」が繰り広げられる可能性はあるのか? <取材・文/日刊SPA!取材班>
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