演出家・松井周が語る「40歳からの老いの受け入れ方」
老眼や白髪、加齢臭に薄毛など、40代になると「老化」という現象に向き合わざるを得ないことが多い。自分の老いをどう受け入れていくのかは大きな問題である。
※週刊SPA!12/10発売号では「40歳からの[正しい老け方]研究」を特集している。人々がどのように「老い」と向かい合っているのか、学んでみるのはいかがだろうか?
<取材・文/古澤誠一郎 撮影/落合星文>
【松井周氏/41歳】
劇作家、演出家、俳優。劇団・青年団を経て、2007年に劇団サンプルを結成。2011年『自慢の息子』で岸田國士戯曲賞受賞。小説やエッセイ、TVドラマ脚本などの執筆活動、映画、TVドラマへの出演なども行う。
人間や社会を見つめ、作品を生み出すクリエイターは「老い」をどう捉えるのか。劇団サンプルを主宰し、劇作家・演出家・俳優として活躍する松井周氏に話を聞いた。
「僕自身は今、41歳なんですが、細かな文字を見るとき自然とメガネを外していたり、公演の仕込みやバラシ作業がキツかったりというのはあります。精神面でも、朝起きるとなんだか暗い気持ちの日があって、なにか分泌物が足りないような、心のノズルが詰まっているような。
その一方で、昔は退屈に思った映画のシーンが、面白く感じたりと嬉しい変化もあって。それも成長したとか成熟したとかではなく、ただ『40代のフィルター』も手にいれたって感じなんですけど」
そもそも、戯曲の執筆、舞台の演出だけでなく、「人は日々の生活で自分や他者から与えられたラベリングや役割を演じている」と見ている松井氏。だからこそ、40代で直面した「老い」をあえて演じることを提案する。
「例えば、僕の作品ではよく親子がテーマになりますが、実際の親子関係も、親子を演じている“親子ロープレ”をしているんじゃないかなって。そう思ったほうが気が楽だと思うんです。“血”とか“運命”という言葉で固定してしまうと逃げ道がなくなってしまいますから。老いも真正面から『受け入れる』だと重い。『まだまだ若い』という、自分や他人から押し付けられた役割をカッコつけながら演じるのは、退屈だしつらくなるはずです。でも、そこで“老いを着る”というか、『老いプレイ』をすれば楽しいと思うんです。『長く生きても良いことないよ~』とか言ってみたいじゃないですか(笑)」
もちろん、演技なのだから、そのときの気分で役から逃げてもいい。また、老いに抗う「プレイ」もアリだ。
「アンチエイジングに励むのも、『週刊現代』や『週刊ポスト』に乗せられて『死ぬまでセックス』を目指すのも、老いプレイと考えれば面白いですよね(笑)。ただ、大事なのは、そう“遊べる場”を本格的に老いる前につくっておくこと。そして、自分で自分にツッコミを入れられる余地を残しておくことですよね。『本当の自分』のような、一つの物語に囚わると、生きるのがつらくなりますから」
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