ジーター引退に華を添えたイチローの「劇的な三塁打」
―[ジーター引退]―
メジャーリーグでも、もうこれほどの選手は二度と現れないだろう。
ヤンキースのデレク・ジーター内野手が、20年のメジャー生活に終止符を打ち遂にフィールドから去った。
本拠地ヤンキースタジアムの最終戦でのフィナーレ、そして現役として本当に最後となったボストン・フェンウエイパークでの今季最終戦は、作りもののドラマをも超える劇的な出来事の連続だった。
ヤンキースタジアムでの最終戦、9月25日のオリオールズ戦に詰めかけた観客は、今季最多の4万8613人にも上り、球場の1階コンコースは試合開始前から大混雑していた。その人並みに紛れてみると、ほとんどの人がジーターの背番号2と名前が入ったユニフォームかTシャツを着ていることに気づく。
ホームプレート側にあるチームストアの大型店舗も、ジーターグッズを買い求めるファンで大盛況だった。この店は通常は店舗内にレジがあるのだが、この最終戦だけは店内を拡張するためレジカウンターを店舗の外に出し、ジーターグッズが店舗の半分以上を占めていた。レジには長蛇の列ができ、ジーターのピンストライプのユニフォームを着た客が、さらに別のジーターのユニフォームを手に持ってレジ前の列に並んでいるという光景も目にした。自分で着る以外にもう1着保存用に買い求めるというファンもいるのだろう。メジャーリーグのユニフォーム製造、販売を行っているマジェステック・アスレテックス社によると、ジーターの背番号2の入ったピンストライプのユニフォームは歴代でもナンバーワンの売り上げだという。
本拠地最後の試合中には、これまで聞いたこともないほどの割れんばかりのジーターコールが響き続け、試合が終わってジーターがスタンドのファンに向かって帽子を取り手を挙げてフィールドを歩くと、その声は一層大きくなった。このホーム最終戦で先発登板したのは黒田博樹投手だったが、黒田は8回までを2失点と好投し3点リードで勝利投手の権利を得て降板したが、9回に抑えのロバートソンが2ランとソロの2本の本塁打を浴びてまさかの同点。しかし9回裏にジーターがサヨナラ右前打を放つという劇的な幕切れだった。
ヤンキースの伝統のライバルであるレッドソックスの本拠地フェンウエイパークで本当の現役最後となった9月28日の試合も、やはり劇的だった。
その日、1番イチロー、2番ジーターというオールスターの1、2番コンビが組まれ、ジーターはイチローに「三塁打を打ってくれよ」と言ったという。そしてイチローは3回の第二打席に本当に三塁打を打ち、次に打席に入ったジーターが三塁内野安打を放ってイチローをホームに返すタイムリーとなった。こうして現役最後の打席はタイムリーヒットで締めくくられ、ジーターという存在にまた1つ伝説が加わることとなった。
敵地ボストンでも、ジーターコールはすさまじいものだった。ヤンキースのユニフォームを着たファンだけでなく、赤いレッドソックスのユニフォームを着たファンもジーターに声援を送った。「今日だけは私もジーターファンよ」と赤いユニフォームを着た年配の女性がにっこり笑って言っているのが印象的だった。
⇒【後編】『引退記念グッズもバカ売れ。桁違いの人気選手引退でMLBは「ジーターロス」』https://nikkan-spa.jp/723240
<取材・文・撮影/水次祥子>
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