需要先食いのツケ!? 軽自動車の未使用車が大量発生中
―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―
今年の軽自動車業界一番の話題は、ホンダS660で決まり!と思いがちですが、業界が激震した軽自動車税の値上げを忘れてはいけません。そんな逆境でも大躍進中なのがスズキ。新型ラパンにはハスラーに続くヒットの予感がします。それにしても、ラパン(ウサギ)=ウサギ跳びしか思いつかない発想力のなさがイヤになります……(担当K)
MJブロンディ=文 Text by Shimizu Souichi
池之平昌信=写真 Photographs by Ikenohira Masanobu
◆オッサンも魅了する新型ラパンには“きゃわゆい”以外の何かがある!
あまり話題になっていないが、軽自動車業界が激震している。原因は4月からの軽自動車税の大幅値上げだ。年間7200円だったのが1万800円と一挙1.5倍に!
たった年間3600円ぽっちと言うなかれ。3600円あればすき家の牛丼が10杯食えるし、100円マックが36個食えるのだ。どっちも食いたくないが。
そのため、今年1月から3月までの駆け込み需要がハンパなかった。メディアは「軽の販売比率が4割を超えた!」とお祭り騒ぎだったが、それは恐るべき需要の先食いだったのである。
加えて軽自動車各メーカーによるシェア争いも血で血を洗うレベルに激化し、自社登録の未使用車が大量発生。未使用車とは、ディーラーがメーカーからの販売奨励金をもらうために自社登録し、売れたことにしたクルマのことで、それらはオークション等に流され、中古車店で新車価格より10万円くらい安く販売されるのが通例だ。
もともと軽は値引きがシブくて5万円前後が上限だから、未使用車なら新車より5万円くらい安く買えることになる。軽の未使用車は埼玉あたりじゃ専門店がそこら中にあるほどポピュラーだが、4月に入ってからこの未使用車が大量にダブつき、なんと30万円安のタマも発生した。すき家の牛丼約900杯、100円マックが3000個食える。食いたくないが。
同時に驚愕の現象が発生した。4月の販売統計で、なんとスズキのハスラーが軽自動車第1位になった! 正式にはホンダN-BOXが首位だが、N-BOXにはN-BOXスラッシュも含まれるので、それを分けるとハスラーが1位になる。
ハスラーは昨年1月に発表されたゆるふわ系の軽で、当初から異例の大ヒットではあったが、販売順位は9位あたりが定位置。1位というのはあり得なかった。
ところがこの4月は、首位争いの常連が大幅に台数を減らした。昨年度年間首位のダイハツ・タントなんざ前年同月比6割減を食らったのに、ハスラーだけは4割増! 謎の首位に輝いた。
といっても5月は8位に戻ったので、「軽自動車税値上げのアオリでハスラーがバカ売れ!」というわけではなかった。唯一無二の個性が生きての瞬間的首位だと推定される。
ハスラーは未使用車もあまり多くなく、値崩れも起きていない。
実際ハスラーに乗ると猛烈にイイ。見た目は超癒されるし内装もセンスいいし走りも十分。ターボ付きなら「これ以上の足グルマはこの世に必要ない!」「ベンツなんざいらんから早く滅びろ!」と思えるほど素晴らしい。
走りはワゴンRとまるで同じなんだけど、見た目や内装の満足度がケタ外れ。それでいて値段はお買い得。「このクルマがずっと首位じゃないのはおかしい!」「ベンツ買うヤツは激バカ!」と思ってしまうくらいイイ。
このハスラーの大活躍もあり、4月以降の販売競争ではスズキがダイハツをブッちぎっているが、そのスズキが再び秘密兵器を繰り出した。新型アルトラパンである。
⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=898001
アルトラパンはユーザーの9割が女性で、そのうち6割が20~30代というリリカル系軽だが、もともとそんなにバカスカ売れるクルマではない。しかし今度のラパンには“きゃわゆい”を超える何かがある。イタリアの小型車みたいな普遍的な愛くるしさがあって、オッサンでも欲しくなってしまうのだ。
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