番外編その4:『IR推進法案』成立で考えること(29)

 ここで、例によって話が飛ぶ。

 以下は、2017年7月11日、「出玉規制へ 3分の2に 警察庁、依存症対策」と題された毎日新聞電子版の記事だ。

カジノを合法化する「統合型リゾート(IR)整備推進法」が昨年12月に成立したことを受け、警察庁はギャンブル依存症対策の一環として、パチンコの出玉規制基準を定めている風俗営業法施行規則の改正案をまとめた。出玉数を現在の3分の2程度に抑えることが主な柱。改正案に対する意見を一般から募り、来年2月の施行を目指す。

警察庁は依存症対策の強化には、射幸性を抑えることが不可欠とし、規制のあり方について議論してきた。(中略)

警察庁は標準的な遊技時間を4時間程度とみて、純増する出玉が5万円(1玉4円換算)を下回るよう基準を見直した。「1時間の出玉は発射した玉の2.2倍未満」「4時間で1.5倍未満」「10時間で1.3倍未満」として射幸性を抑える。大当たり1回の出玉の上限は、2400個(1玉4円換算で9600円)から、1500個(同6000円)に減らす。パチスロも同様の水準で規制する。【川上晃弘】

 どうもようわからん。

「統合型リゾート(IR)整備推進法」の成立と、パチンコの出玉規制が、いったいどこでどのように結びつくのだろう?

 いやいや、そもそも警察庁は、「(パチンコ・ホールで)換金がおこなわれているなど、まったく存じ上げないことでございまして」

 と、自民党の「時代に適した風営法を求める議員連盟」の質問に答えていたのではなかったか。(朝日新聞。2014年8月5日)

 換金を「まったく存じ上げない」のであれば、いったいどこをどうやって、「出玉が5万円」だの「1玉4円換算で9600円」だのという数字が出てきたか(笑)。

 もう日本の構造的腐敗と付随したグレイゾーン、およびそれを(法規的ではなくて)恣意的随意に監督・管理している警察機構の存在とをよく示した記事だ、とわたしは思う。

 知らない人は居ないだろうが、違法であろうがなかろうが、パチンコで得る(特殊)景品は、ホール→古買商→専門問屋→ホールという手続き(三店方式)の中で、換金できる。

 その中間過程に、警察共済組合が絡むことも周知の事実だ。

 たとえば、特殊景品の「金地金」を統括するのは、東京では東京商業流通組合(TSR)と東京ユニオンサーキュレーション株式会社(TUC)であり、東京以外にも同様の目的で創設された会社が、各道府県庁所在地ごとにある。どの会社も経営陣のほとんどすべては警察OBの天下りで占められている。

 それゆえ、『風営法』(ないしは『風適法』)に確実に抵触しているであろうパチンコでの換金が、摘発されないだけなのである。

 つまりパチンコは、警察共済組合からの出資も多い、警察の主要な利権産業となっていた。

 その警察が、ギャンブル「依存症」対策として、パチンコおよびパチスロでの出玉を抑える『風営法』施行基準に改める、と言い出した。

 なんか、怪しい(笑)。

 日本警察は、パチンコ利権からカジノ利権に乗り換えようとしているのか。誰もが抱く疑問だろう。

 じつは2015年夏、ヴェネシアン・マカオのPAIZA(LVS=ラスヴェガス・サンズ社のVIPフロア)で、日本の警察庁キャリア官僚十数名が「研修」する姿を、たまたま目撃してしまったのだが、その時に抱いた不安が現実のものとなっているのか。

 しかし、どうやって?

⇒続きはこちら 番外編その4:『IR推進法案』成立で考えること(30)

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PROFILE

森巣博
森巣博
1948年日本生まれ。雑誌編集者を経て、70年代よりロンドンのカジノでゲーム賭博を生業とする。自称「兼業作家」。『無境界の人』『越境者たち』『非国民』『二度と戻らぬ』『賭けるゆえに我あり』など、著書多数。