ばくち打ち
番外編その4:『IR推進法案』成立で考えること(30)
日本でカジノが「公認」されるようになれば、警備および危機管理について、直接的にせよ間接的にせよ警察機構およびその関係者がかかわるのは、ある程度しかたあるまい。なぜなら日本に存在する警備・危機管理企業は、そのほとんどが警察OBたちによって経営されているのだから。
日本の警察組織、というか官僚機構全般にわたり、その職員の退職後の再就職を積極的に斡旋することで世界に知られる。
いわゆる「天下り」だ。
高級官僚(キャリア組)はもちろんのこと、なぜか下級職員たちまで「天下り」の恩恵に浴する仕組みになっている。
キャリア組の「天下り」は、民間企業・団体と各省庁の癒着の結果であり、「あと払いの収賄」的要素が濃厚なのでわかりやすいが、日本の役所はなぜ下級職員たちにまで再就職先をあっせんするのか?
退職後の相対的に潤沢な公務員年金以外にも収入保障をして、現役職員たちおよび退職者たちに組織にたいする忠誠心を抱かせるためである。
それゆえ、役所でおこなわれている構造的癒着や不正は、ほとんど告発されることがない。
じつは『刑事訴訟法』で、公務員は不正を見つけたとき、それを告発する義務を負う。でも、「忖度」と「(上級者の)ご意向」が幅を利かす省庁で、不正告発などされたら、たまらんのじゃ。
それゆえOBたちは、元の職場が構造的におこなっている悪事をバラせない「共犯」関係に組み込まれる。
わたしの理解では、「テント・ションベン理論」の実質的な部分応用であろう。
「テント・ションベン理論」とは、第36代アメリカ大統領だったリンドン・B・ジョンソン(通称・LBJ)が言語化した。
政府執行部の任命に際し、LJBは自分に批判的だった民主党内のうるさ型上院議員をキャビネットに入れた。
なんであんな奴を入閣させたんだ、との取り巻きの反発に、
「あいつがテントの内側から外に向けてションベンしても一向にかまわんが、外からテントの中に向けてションベンされては、かなわんじゃろが」
と、第36代アメリカ大統領はまことに説得力に溢れる返答をしている。
これすなわち「テント・ションベン理論」。
不満分子も受益者に仕立て上げ、告発を封じる。
それゆえ日本の省庁は、下々の職員たちの再就職先まで面倒をみるのである。囲い込んで黙らせる。
テントの外からテントの中に向けてのションベン「自粛」。
どうしてもションベンをしたくなったら、テントの中から外に向けてやってくれ、と。
日本の官僚機構が、この「テント・ションベン理論」を実践するためには、受け皿となる民間企業あるいは財団・公益法人が膨大に必要となる。
だから日本では、狭い国土にもかかわらずその隅々まで、国および地方自治体から大枚な補助金を頂戴する、わけのわからん、あるいは実体が不明なユーレイ公益法人がぼこぼこと設立されているのである。
もう納税者たちは、いいように喰いものにされていた。
まあ、長い物には巻かれろで、それに文句を言わない国民たちにも責任があるのだが。
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