番外編その4:『IR推進法案』成立で考えること(32)

 前述したように、警察が警備・危機管理の両面で「公認カジノ」とかかわるのは、日本の現状から考えれば仕方ない。

 また、日本で認可される「公認カジノ」の事業者は、経営実績と信用を持つ外資が主導するものとなることも、ほぼ間違いないのだろう。

 まだ秋の臨時国会に『IR実施法案』が上程されていないのにもかかわらず、業界ではすでに、横浜ならLVS大阪ならMGMという、共にラスヴェガス資本の具体名が噂されている。

 サミーとかユニバーサルエンターテインメント(旧アルゼ)とかダイナムとか、日本でのカジノ・ライセンス獲得を目指し現在海外で経営実績を積み重ねているパチンコ業界の大所も、資本参加はする形態になるのだろうが、おそらく従属的な立場としてのそれだ。

 日本で認可されるカジノは、圧倒的な資本と経営実績が膨大なLVSやMGMなど外資大手が、事業者として主導する形態になる、と考えてもそれほど間違ってはいないはずである。

 コンプライアンス遵守が徹底した(とりわけ米系の)カジノ事業者と、構造的腐敗が常態の日本の官僚機構および「グレイゾーンの帝王」日本警察は、どうやって折り合いをつけるのか。

 さてさて、ここでまた本項の本来のテーマであるジャンケットに戻る。

 その業態として多くのグレイゾーンを含まざるを得ないジャンケットは、日本で「公認」されるカジノから全面的に排除される、とわたしは自信をもって予測する。

 そうであるなら、前述したように、大陸からの「ハイローラー」たちの誘致はどうなるのか?

 大陸からの「ハイローラー」たちが、プレミアム・フロアやジャンケット・ルームで盛大に博奕(ばくち)を打ってくれない限り、アジア太平洋地域の大手カジノ事業者たちはやっていけない。

 もちろん「IR(統合型リゾート)」のノン・ゲーミング部門での収益も、それなりに期待はできるのだろう。しかしそんな「大人の遊園地」みたいなものに、一件1兆円を投資しようとする酔狂な大手カジノ事業者はおるまい。

 そもそも「IR」のもともとのコンセプトは、ゲーミング部門からのアガリで、他のノン・ゲーミング部門の非収益性をカヴァーする、というものなのである。

 つまり、カジノが膨大な利益を上げない限り、「IR」創設にかかわるコンセプトの基礎部分が崩れてしまう。

 だからグレイな部分が多かろう既存のジャンケット事業者たちは排除するとしても、日本の官僚機構は実質的にジャンケット機能をもつものを新たに創設するのではなかろうか。

 日本の株式市場が「官製相場」であるならば、言ってみれば、「官製ジャンケット」である(笑)。

 ここまで書けば、わたしの妄想はだいたいご理解いただけた、と思う。

 そう、ジャンケットは禁止して、その代わりに実質的にジャンケットの機能を持つものを日本の警察が立ち上げるのである。

 そんなバカな、とお思いか?

 とんでもござんせん。日本の警察機構を舐めたらあかんのじゃ。

 日本の警察には、類似なことをやってきた過去がある。

⇒続きはこちら 番外編その4:『IR推進法案』成立で考えること(33)

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PROFILE

森巣博
森巣博
1948年日本生まれ。雑誌編集者を経て、70年代よりロンドンのカジノでゲーム賭博を生業とする。自称「兼業作家」。『無境界の人』『越境者たち』『非国民』『二度と戻らぬ』『賭けるゆえに我あり』など、著書多数。