ばくち打ち
番外編その4:『IR推進法案』成立で考えること(33)
若い人たちはご存じないかもしれないが、その昔パチンコの「景品買い」って、『風営(あるいは風適)法』に抵触する、として違法だった。
1990年代初頭まで、警察は「景品買い」をどこどこ検挙していたのである。
ところが1991年、『暴対法(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律)』が成立、2000年代中期からは、各自治体による『暴力団排除条例』が定められ、暴力団はその資金源としてパチンコ業界とかかわれなくなってしまった。
それでは、パチンコの「景品買い」はいなくなったのか?
ぜんぜんいなくなってない(笑)。
周知のごとく、むしろ以前より大っぴらに営業している。
警察の「指導」により、ホール→古買商→専門問屋→ホールという、いわゆる「三店方式」が立ち上げられた。「(パチンコでの)換金など、まったく存じ上げない」はずの警察によって(笑)。
「特殊景品」がその「三店」を流通する過程に、警察共済組合が関与している件については、前述したとおりである。それだけではなく「三店方式」のすべての過程で、現役にせよ退職にせよ警察官が関与する。
すなわち、違法ながら摘発される恐れがない「景品買い」が、事実上日本全国に立ち上げられたのだった。
日本の優秀な(というか悪賢い)警察官僚たちは、カジノ・ジャンケット業界にも、「三店方式」と類似した制度を構想しているのではなかろうか。
これなら、日本の新規公認カジノからジャンケットを排除しても、公明正大に(というか、摘発の恐れなく)大陸の「ハイローラー」たちを呼び込むことが可能となるのだから。
やりそうだな、「なんでもできる日本警察」ならば。
おそらく問題となるのは、大陸での集金および日本あるいはアメリカへの送金という『為替管理法』に抵触しかねない部分となるのだろうが、問題となってもなにしろそれを摘発する機関が日本には存在しない。
五店・六店と中間業者を多く経由して(「六店方式」か)、途中でビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨を絡めれば、カネの流れをトレースされる心配もまずあるまい。
国会で追及されたら、「記憶がない」「記録もない」。
なにしろ「記録は破棄した」佐川宣寿・財務省理財局長が、国税庁長官にご栄転あそばされる統治システムなのだから。
これが、安倍晋三首相の言う「世界最高水準のカジノ規制」の実態にならないことを、わたしは祈るばかりである。
* * * * *
「番外編」が、ことのほか長引いてしまった。
そろそろ『ばくち打ち』に戻ろうと思う。
第5章では、第1章「勝てば幸運、負ければ実力」の竜太が再登場する。
メルボルンのクラウン・カジノでスポンサーのカネを持ち逃げした、新宿歌舞伎町にたむろす自称「ばくち打ち」のろくでなしだ。
第5章につづく第6章では、本項でこれまで説明してきた「ジャンケット」業界をテーマとするつもりである。ノンフィクションとしては筆が鈍る(いや、キーボードが叩きづらい、か)世界でも、創作としてなら扱えるはずだ。
フィクションとしてしか書けない現実、というのもまた存在するのである。
(番外編その4 「『IR推進法案』成立で考えること」 了)
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