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AIで民主主義を操作できる――SNSで収集されたビッグデータの政治利用
2020年01月14日
AIで民主主義を操作できる――SNSで収集されたビッグデータの政治利用
深田萌絵
<文/深田萌絵:ITアナリスト>
台湾総統選挙への中国の介入
2016年の台湾総統選時の蔡英文氏(ウィキペディアより)
台湾では1月11日、総統選挙が行われ、現職の与党・民進党の蔡英文総統が、過去最多となる800万を超える票を獲得して再選された。今回の選挙期間中、民進党の蔡英文候補は終始、中国による選挙介入を厳しく批判したが、世界中の人々の通信や家庭での会話を監視し、不穏分子をAIで予測して事前に取り除き、AIで言論・情報制御を行い、民主主義国家の有権者の投票行動をコントロールしていこうという流れが世界的に起こっている。 拙著
『「5G革命」の真実』
(WAC)には、次世代型通信規格5Gは、世界中に置かれた中国製5G通信基地局から収集されたスマホ、デバイス、中国製監視カメラからの情報が、中国製海底ケーブルを通じて高速で中国に収集されていく諜報インフラだという事実を書いた。 それにAI技術が加わることによって、大量に収集された監視情報をAIで解析することで、潜在的な敵対分子を早めに分類して監視を強化し、潜在的に諸外国のパンダハガー(親中派)政治家に投票しそうな有権者をSNS上の広告や投稿で誘導するという戦略に利用している。 これは懸念や想像でもなんでもなく、データドリブン型の有権者誘導は2016年頃から欧米で始まった現在進行形の現実だ。中国が繰り広げる超限戦(あらゆる手段で制約なく戦う戦争)において、歴史戦、情報戦で負けた日本が、AI戦争でも既に負け始めている。 スマートシティやキャッシュレスの推進は、監視カメラや電子決済でより国民を監視しやすくするために中国共産党がステルスで推進しているプロパガンダの一部である。インターネット・セキュリティ技術で遅れ、サイバー攻撃によるデータの漏洩や、スパイ通信企業ファーウェイ機器へ対処するためのスパイ防止法もなく、刑事事件上、データは財物ではないために盗まれた時に犯罪としての立件が難しい日本がスマートシティを始めたら、すべてのデータが5G通信経由で中国に盗まれ、社会信用制度のスコアの評価に利用されるだけである。科学技術振興機構のデータベースすら、入札業者が勝手に中国に移管して情報が取られ放題で、スマートシティの運用側がまったくスマートではないのが現状である。
AIで民主主義を操作できる
そういった監視問題だけではない。イギリスのEU離脱の国民投票では、実際にSNSから収集されたデータから個人の政治的志向が解析され、保守派、リベラル派、ノンポリ層というように分類がなされて、民主主義の根幹となる投票行動に利用された。そこからさらに言論を統制し、一方に都合の良い情報しか出さなければ、有権者の投票行動に影響を与えられることは理論的に可能なのである。この驚くべき事実は、米大手プラットフォーム企業に勤めていたエンジニアから直接話を聞かせてもらって知ったことだ。 2019年8月のシリコンバレーは、北から流れ込むカリフォルニア海流のために冷たい西風が吹き込んで真夏でも少し肌寒い。筆者は弊社の業務に必要なエンジニアを探すために渡米したのだが、仕事を求めるITエンジニア達との面談で耳を疑うような話を聞いた。 「SNSを通じて収集されたビッグデータが政治に利用されていたんだ」 インド人やアジア系人種で込み合うスターバックスで、ケヴィン(仮名)はそう答えた。ケヴィンは、半年ほど前まで某大手IT企業でエンジニアとして働いていたが、トランプ支持を表明したことを契機に仕事を干されて社を去ったそうだ。 ここ数年、トランプ支持の保守派エンジニアは能力にかかわらず大手IT企業内で冷遇や解雇という憂き目に遭っていることが問題になりつつある。筆者自身も業界内では営業妨害や、政治的理由による供給停止などの妨害に幾度となく遭っており、一般に浸透している「自由な空気のシリコンバレー」の実態が、イノベーションを葬り去るIT大手企業の独壇場だということは、民主党上院議員エリザベス・ウォーレンの指摘通りである。 「SNSの情報が政治に利用されているとはいっても、ターゲティング広告は比較的よくある方法で、そんなに珍しいことではないですよね」 筆者がそう尋ねると彼は説明し始めた。 「もはや、そんなレベルではない。大手IT企業が持つビッグデータをAIで解析すれば、ユーザーを政治思想ごとに分類し、そのグループをターゲットに洗脳されやすさでスコアリングして階層別に分類し、これまで投票に行ったことのない層を任意の候補者に投票させるという実験が、各国のあらゆる選挙で大々的に行われてきている。このAIを使った意識操作は、何社もの米大手IT企業が研究と試験を行っている」 「有権者の投票行動を変えられるということ?」 「ビッグデータに基づいたネット広告ってそういうことだろ?」 「つまり?」 「ターゲットにしたユーザーの過去の購入履歴、行動範囲、起床時間から就寝時間を計算して、一日のうち何時から何時がゆっくりデバイスの前でネットサーフしているのかを逆算し、いくつもの推薦商品の広告を見せる。表示されてクリックしても、しなくても、それはデータとして蓄積されていく。解析するためのデータさえあれば、ターゲットの嗜好は十分に予測できる」 「そうね」 「AIが予測した結果を見せれば、『広告を見るまでは意識になかった購買意欲』が刺激されて思わずクリックしてしまう。それは、ユーザーの行動を変化させたということになる。もはやAIが未来を予測しているなんてものではなくて、人間がAIに民主主義の未来をコントロールされ始めている時代の入り口に我々は差し掛かっているんだ」
コンピューターの予測に基づいた人間の行動が予測を現実化する
言われてみれば、その通りだ。心理学や行動分析学は何年も前から米国が優れていて、野球や金融ですら統計を駆使して解析されてきた。10年以上前に筆者が金融機関の現場にいた時代には、ファンドもシステムトレードと呼ばれるプログラムによるトレーディングが流行し、感情を持つ人間が介在するよりも安定的な結果が得られるとされてきた。 ところが、株式や為替市場においては分析に使えるデータはおおよそ限られてくる。そうなると、平均的な人が開発した統計解析システムによって得られた結果を基に行われるトレードでは、結局は多くのシステムと予測が被ってしまい投資行動が偏ってしまう。 例えば、あるポピュラーなシステムが、「A社の株を買え」という結果を算出すると、多くの人が買い注文を出し、流動性の低い株なら自分たちの買い注文で株価を暴騰させてしまうことがよくある。あまりにも統計分析という手法がポピュラーになりすぎて、統計結果が未来を予測しているのか、コンピューターの予測に基づいた人間の行動が予測を現実化しているのか、境界線が曖昧になってきていた。 最終的に似通ったプログラムによる均質化された予想が大衆の行動に偏りを及ぼすのだが、前例のA社の株式に対する投資行動で言えば、一斉に買い上げられれば株価が暴騰するが、買い注文が一巡すれば株価は急激に下がるのでシステムは「売り予想」を出す。そうすると今度は人々は慌てて売りに走るという結果を導き出しかねないのだ。 「AI解析でターゲットに何を見せれば、その人の投票行動に影響を与えられるのか。若者にもて囃されるシリコンバレーの企業で行われているおぞましい研究の話はいくらでも漏れ伝わってくるさ」 ケヴィンは、守秘義務の関係で確たるデータは出せないが参考に、と言って調査レポートのコピーを置いて帰路に就いた。 シリコンバレーにおいてトランプ支持者だと言おうものなら「変わり者」「非人道主義者」とレッテルを貼られるだけでなく解雇に至る事例がいくつも報告されている。かつて軍事産業で成長したこの地域は、グローバリストたちが推進するポリティカル・コレクトネスによって、有色人種の権利が過度に優遇される世界へと変貌した。 今や、シリコンバレーのスターバックスの席は、飲み物も食べ物も注文しない有色人種で埋め尽くされている。人種差別を理由に、注文せずに席を占める有色人種に、スターバックスの店員は注文を促すことも、注文している人を優先して席を譲るように促すことすら「ポリティカル・コレクトネス」という壁を前にためらわれる状況だ。
【深田萌絵(ふかだ・もえ)】
ITビジネスアナリスト。Revatron株式会社代表取締役社長。本名・浅田麻衣子。早稲田大学政治経済学部卒。学生時代にファンドで財務分析のインターン、リサーチハウスの株式アナリスト、外資投資銀行勤務の後にリーマンショックで倒産危機に見舞われた企業の民事再生業務に携わった。現在はコンピューター設計、チップ・ソリューション、AI高速処理設計を国内の大手企業に提供している。最新刊は
『米中AI戦争の真実』
(育鵬社)。YouTubeで「WiLL Moe Channel」開局中。
深田萌絵
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米中AI戦争の真実
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