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“渋谷の北朝鮮” 秀和幡ヶ谷レジデンス、長期独裁の実態「築古マンションなのにリフォームは厳しく制限、監視カメラで入退館までチェックされ…」

 マンション購入者が必ず入る管理組合。本来は物件を適切に管理・運営するための組織であるにもかかわらず、理事長らの専横により住人が苦しむケースが多発中だ。紛糾する現場を訪ねた。

“渋谷の北朝鮮”マンションから学ぶ「ヤバい管理組合に立ち向かう覚悟」

[マンション管理組合]の暴走

秀和幡ヶ谷レジデンスは一等地にあるにもかかわらず、資産価値は低迷。周辺相場の3〜4割安で取引されていた時期もあった

 白壁に青い屋根、曲線のバルコニーが特徴の「秀和幡ヶ谷レジデンス」(東京都渋谷区)。  ヴィンテージマンションの美しい外観とは裏腹に、約30年にわたり、同一人物が理事長を務める“長期独裁”のもと、不可解なルールが増え、SNSでは「渋谷の北朝鮮」と揶揄されていた。  ノンフィクションライター・栗田シメイ氏は、住民たちが自治を取り戻すまでの闘いを描いた『ルポ 秀和幡ヶ谷レジデンス』を上梓し、話題を呼んでいる。 「1974年築と築古マンションなのにリフォームは厳しく制限。監視カメラで入退館はチェックされ、17時以降は介護やベビーシッター業者の出入り禁止。荷物の搬入時には中身を確認されることも。最も理不尽だったのは入居前の面談です。職業や収入、家族構成まで聞かれるのに、選考基準は不明瞭で多数の人が落とされてきた。家賃収入が途絶え、飲食店でアルバイトしていたオーナーもいます」  なぜ、こんな異常とも言える独裁体制が続いたのか。 「通常、管理組合の理事長や役員は数年ごとに交代する輪番制です。学校のPTAと同じで、普通は面倒なだけなので誰もやりたがらない。ところが、ここでは理事長が役職に固執し続けました。一方で、多くの住民は管理組合の活動に無関心。総会にも出席しないため、知らぬ間に独自のルールが増えていったのです」

住民側が勝つには強いリーダーの存在が大切

[マンション管理組合]の暴走

「渋谷の北朝鮮」と呼ばれたマンションの異常な実態と、住民たちの長年にわたる闘いを描いた『ルポ 秀和幡ヶ谷レジデンス』(毎日新聞出版)

 しかし、住民たちはついに立ち上がる。 「決定打は’18年の管理費の値上げでした。突然、1.67倍に引き上げられ、これまで黙認していた住民も怒りが爆発。最初、有志は匿名での抗議でしたが、実名で活動するようになると支持が広がった。4年間にわたる闘いの末、委任状の過半数を獲得し、ついに理事会を交代させました」  しかし、「これは稀なケース」だと栗田氏は続ける。 「管理組合と対立し、住民側が勝つのは珍しい。今回は住民側に強いリーダーがいたことが大きかった。途中で挫折してしまう運動が多いなか、地道に支持者を増やしてきた。マンション自治も政治と同じ。結局、総会で過半数を取るしかないんです」  マンションの未来、そして自分たちの未来は、住民の行動にかかっている。
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不動産Gメンが語る「自主管理物件は地雷だらけ」
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