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あの有名企業も黒かった!【2012年・ブラック企業10大ニュース】

スカイツリー開業にロンドン五輪と、今年もいろんなことがありました。が、ニッチな世界の出来事も、大きな世界の潮流を映し出す。というわけで、さまざまなジャンルのウォッチャーたちに今年の10大ニュースを聞いた! 【ブラック企業ニュース】若年化、非正規雇用へと問題拡大
川村遼平氏

川村遼平氏

「これまで就活生や一部の正社員の問題だったブラック企業が、広く社会問題化した一年でした」  若者の労働問題に取り組むNPO法人POSSEの川村遼平氏はこう指摘する。中でも顕著だったのが“若年化”だという。 「ブラック企業問題で最も重大なのは、やはり“過労死”です。従来、過労死の被害者といえば、40代~50代管理職でした。しかし、最近、POSSEには男女問わず10~20代の子供を持つ親からの相談が増えています」  なぜ若年化が進んでいるのか。 「原因のひとつは就活。何十社も受けて1社しか受からない状況で、自分の代わりはいくらでもいると自覚させられ、ここを逃したら次はないという恐怖心からブラック企業にしがみついてしまう」  それが企業側の思うツボとなる。 「若い世代は代わりがいると、ウツで辞めようが企業には問題ない。大量採用し、長時間労働させ持久力を測る。そこでパフォーマンスを発揮できる人を残し、あとは解雇せず、いじめて辞職に追い込むなど手口が高度化している」  最近では、それを手助けするような「巧妙なパワハラ手法を入れ知恵する弁護士や社労士、“ブラック士業”が暗躍している」とも。 「さらに、今後、危惧しているのは、“非正規雇用”の方々の問題です。会社は契約社員(準社員)や幹部候補契約社員などの肩書を与え、正社員昇格をエサにめちゃめちゃ働かせる。でも実際は、待遇は非正規のまま、切ろうと思えば、簡単に切られてしまう。若者は自分の状況を改善できると思っておらず、さらに非正規の人は『安定的に働けなくても仕方ない』という二重の諦めがあり表面化しにくい」  大きな社会問題となりながら、改善への施策が取れぬまま年を越し、「来年はさらにうつ病が増加する懸念がある」とも。来年はいいニュースが届くといいのだが。 ●1位 過労死防止基本法制定を求める署名が30万を超える 過労死した人の遺族が中心となった署名運動で、30万筆も集まるのは異例。日本初の労働時間を規制する法律制定に向けた第一歩 ●2位 ワタミの過労死事件がようやく労災認定される 2006年、26歳の女性従業員が入社2か月で過労自殺した事件が、2月にようやく労災認定。だが渡邉会長の反省のない態度に非難集中 ●3位 度重なるバス事故でツアーバス業界の過酷さが露呈 関越道の高速バス事故をはじめ、バス事故が多発。過当競争による過酷な労働環境が問題化し、バス運転手の労働時間規制へ ●4位 今後、さらに問題化!?非正規雇用者による過労相談の増加 正社員昇格をエサに非正規雇用者を過酷に働かせるケースが増加。過労死した非正規雇用者の遺族から初めて相談が持ち込まれた ●5位 ミシュランガイド掲載のホテル、固定残業代訴訟で従業員側勝訴 一部社労士が推奨する、基本給に残業代を含ませる“固定残業代”問題。京都のホテルの従業員が、固定残業代の未払い分を勝ち取る ●6位 手帳に罵詈雑言も。10代社員のパワハラ自殺 2010年、福井県の消火器販売会社の男性新入社員(19歳)がパワハラにより自殺。今年7月に労災認定。若者の労働環境過酷化の象徴 ●7位 公務員も安泰でない。ストレス過多新人教員の過労死 2011年、女性小学校教師(24歳)が赴任半年後に過労死。今年7月に公務災害認定。教職現場は厳しく過労死や過労自殺が絶えない ●8位 「ブラック企業」が社会問題として浸透『ブラック企業』発売 単なる事例紹介にとどまらず、ブラック企業を分析・検証した初の本。普通のおじさんもブラック企業を気にするようになった証し ●9位 ブルームバーグPIP(業務改善命令)による解雇無効 PIPは達成不可能なノルマを自己設定させて解雇に追い込むリストラ手法。10月、ブルームバーグのPIPによる解雇無効の判決が出た ●10位 厚労省が初めて業種別の3年以内離職率を発表 これにより外食、教育関係の離職率が5割以上と判明。将来的に会社ごとの離職率が公表されれば、ブラック企業が見分けられる 【川村遼平氏】 POSSE事務局長。若者の貧困・格差問題に取り組むNPO法人POSSE事務局長。「ブラック企業大賞」企画委員。http://www.npoposse.jp/ ― 2012年ニッチな世界のジャンル別10大ニュース【3】 ―
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