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「メルカリは赤字でヤバい」は本当か?/馬渕磨理子

「あの企業の意外なミライ」を株価と業績から読み解く。滋賀県出身、上京2年目、犬より猫派、好きな言葉は「論より証拠」のフィスコ企業リサーチレポーター・馬渕磨理子 です。  私はこれまで、上場銘柄のアナリストとしてさまざまな企業の業績予測、市況予測を行ってきました。また、自身で株式投資を5年以上に渡って行い、市場に向き合ってきました。  本企画では、そんなリサーチャーである私馬渕の視点からみなさまに「あの企業の意外な情報」をお届けます。

メルカリのホームページ

「メルカリは赤字でヤバい!」は本当か?

 今回取り上げるのは、フリマアプリでおなじみのメルカリ(4385)の財務分析です。  同社が現在展開している事業は、国内メルカリ、米国メルカリ、そしてメルペイの3つ。国内メルカリはすでに利益を生み出す事業となっている一方、米国メルカリはアプリ取引額が小さく、利益を生み出す事業にはなっていません。そのため株価推移も冴えない見通しにはなります。ただ、本当に「メルカリは冴えない赤字ベンチャー」なのでしょうか。  結論を急げば、それは間違いです。その理由を、メルカリの財務諸表に注目して3分ほどで説明していきましょう。

なんで赤字?答えはテレビCMにあった

 そもそも、“ユニコーン企業”(企業価値が10億円以上ある企業のこと)として上場を果たしたメルカリの株価が、いまなぜ下がりつづけているのかご存知でしょうか。その答えを知る方法として、同社の損益計算書(略して“PL”=profit and loss statement)を見てみましょう。
メルカリPL分析

売上高は毎年順調に増加(図表1の濃いブルー)、営業損失は拡大(水色)、「販管費」が増加(イエロー)している

 PLは、簡単に言えば企業に「出てくるお金」と「入ってくるお金」を示したグラフのこと。メルカリのPLを見ると、売上高は毎年順調に増加していますが、営業損失は拡大していることがわかります。  つまり、販管費にあたる部分費用が売上高の90%以上を占めており、利益を圧迫しています。背景には、直近1年間に中古品リユース市場の競合の動きが激しくなっていることが挙げれます。  そこで、メルカリは事業の選択と集中の判断を行っています。撤退の選択をしたことで、今後は費用の圧縮が見込めます。具体的に撤退事業は、自転車シェアリングの「メルチャリ」、旅行のブログなどをシェアする「メルトリップ」、個人のスキルシェア「teacha(ティーチャ)」です。  そして、今後、集中していく事業は日米のメルカリとメルペイです。具体的に数字で振り返ってみると、下記のようになります。 2017年6月期:売上高220億円、営業損失27億円(上場前) 2018年6月期:売上高347億円、営業損失44億円 2019年6月期:売上高510億円、営業損失は非開示(予想)※直近の第3四半期は59億円  つまり、営業損失は拡大しているように見えます。さて、その原因は何なのか。  答えはシンプル。「販管費」の増加が原因です。この「販管費」とはいったい何のことでしょうか。その中身を見てみると…。  338億円の「販管費」のうち、約49%の168億円が「広告宣伝費」となっています。「広告宣伝費」は、文字通りテレビCMや雑誌や街頭看板にかける広告費のこと。これは、今のメルカリがマーケティング施策として、「攻めの姿勢」を取っていることを意味します。  この点を見逃して、メルカリの赤字の部分だけを見るのはもったいないです。というのも、「販管費」は抑えようと思えばすぐに抑えられる項目。ピタリとテレビCMをやめればよいだけの話ですから。  それより、見落としてはいけない事実があります。  メルカリは現在、営業利益が黒字化する時期、4~5年先にはグループ営業利益が数億円に、また株式時価総額も1兆円レベルに膨らむ可能性もあると言われています。そのため今の「販管費」にかけるコストが“意味のある投資”であると捉えたほうが正しいのです。
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実はポテンシャルが高いメルカリ
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