将来の“スラム化”を避ける「マンション選びのコツ」
アベノミクス効果や五輪招致の成功で活況を呈すマンション市場。ベイエリアを中心に高層マンションが次々に建設されているが、その一方では、経年劣化の激しい“おんぼろマンション”も増加し、なかには深刻なトラブルを抱える物件も少なくない。住民の高齢化、共用部にはゴミが溢れ…“負のスパイラル”にはまり「スラム化」するマンション問題について専門家に伺った。
◆スラム化マンションを避けるために、総会議事録を見ろ!
「私はかねてからスラム化マンションの問題は、『今世紀最大の社会問題になる』と警告してきました」
そう話すのは、住宅ジャーナリストの榊淳司氏だ。
「最近では100年住めるようなマンションもありますが、従来のマンションの寿命は50年と言われています。しかし、日本で集合住宅の区分所有の制度が始まって60年がたった今でも、きれいにマンションを“終わらせた”例はほとんどないのです」
日本ではこれまで住宅を供給することばかりで、いざ老朽化した後の処理方法はほとんど考えてこられなかったのだという。
「高度成長期ぐらいまでは住宅不足だったので、当時の住宅・都市整備公団(現在の都市再生機構)が“ニュータウン”と呼ばれる大規模な団地群を数多く建設したのですが、こうした集合住宅が今、寿命を迎えています。マンションの寿命が50年という意味では、直近10年で最初期のマンションが“終わりの時期”に来ているのです。マンションを造るばかりで、出口戦略を考えてこなかったツケがまわっている格好です」
少子高齢化や経済成長の鈍化といった社会構造の変化に対応しきれなかったことが主な原因だが、マンション入居者の意識にも問題があると氏は指摘する。
「区分所有というのは本来、自主管理、自己責任が問われるもの。しかし、どういうわけか日本人はマンションを購入した時点で完結してしまい、マンション内のコミュニティの形成を怠ったり、管理組合の活動に無関心だったりする。本当は、マンションを購入してからが“始まり”なんです」
住人らが管理組合に消極的なのは、管理会社の存在も大きい。
「管理会社というのは、マンションのデベロッパーや建設会社の関連会社であることが多いのですが、管理会社は儲けにならない仕事はしたがらないし、基本的に管理人を派遣するだけというスタンスが多い。組合も管理会社に頼りっきりで、組合の存在が有名無実化している例も見かけます。そうなってくると組合の活動が鈍化し、管理費などの納付が滞りがちになったり、修繕の合意形成ができないなどの弊害が生じる。管理会社は1年契約のところが多いので、そんな物件からは手を引きたがる。そしてスラム化に至るわけです。今後10年はバブル期に建設されたマンションに同じことが起きるだろうし、今次々に建てられている供給過剰なタワーマンションも、将来的には危ないでしょう。購入者目線で話をすると、今後、中古マンションを買う場合は管理組合の総会議事録を過去3年間分はチェックしたほうがいい。そこには住人トラブルや建物の不具合など、問題点がすべて記録されていますから。スラム化する物件は、なるべくしてなるということです」
【チェック!】多く当てはまる物件は要注意
・共用部分に私物が放置されている
・1Fのテナントが潰れたまま
・修繕積立金の残高が低い
・管理費の滞納者が多数いる
・築10年以内で雨漏り修繕をしている
・管理組合の理事会が内部対立している
・建物から“負のオーラ”が出ている
【榊 淳司氏】
バブル期以降、四半世紀以上にわたりマンション分譲を中心とした不動産業界に関わる。公式HP(http://www.sakakiatsushi.com)
取材/吉岡 俊 槍田 創 取材・文/青山由佳 加藤カジカ 牧 隆文
― [マンションのスラム化]がヤバ過ぎる!【5】 ―
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