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鉄拳@MOGRAイベントレポ サウンドチームが語る『鉄拳ミュージック』の魅力

―[鉄拳@MOGRA]―
2011年11月19日、対戦格闘ゲームの雄『鉄拳』シリーズにちなんだ公式クラブイベント『TEKKEN TAG TOURNAMENT2 : Driving Beats』が開催された。会場は秋葉原にあるイベントスペースMOGRA。同年9月よりアーケードで稼働している『鉄拳タッグトーナメント2(以下、TTT2)』のオリジナルサウンドトラックの発売を記念して、同シリーズに縁あるコンポーザーたちが集結。歴代シリーズのサウンドを手がけてきた作り手たちが、初期作から最新作まで、ナムコサウンドチームの歴史を振り返るかの様な多彩な楽曲を爆音でプレイした。 この貴重な機会を逃すまいと、豪華出演者に、『鉄拳』サウンドの魅力、そしていかに音楽が生み出されているのか話を伺った。 鉄拳,MOGARA◆『鉄拳』シリーズ プロジェクトディレクター 原田勝弘氏
鉄拳,原田勝弘

原田勝弘氏

原田: 鉄拳といえば“お祭り感”ですね。サウンドチームの方にオーダーをするときには、「『ROUND1 FIGHT!』と言ってから、かなりの早さでピークにいってくれ」とお願いしています。音楽が流れたら、すぐに盛り上がれるのが鉄拳ミュージック。ただ、サウンドチームとは意見が割れることが多いです。僕らは音楽からでなく、ゲーム側から音楽を考えます。ゲームによって違う展開やテンポ(ペーシング)を考えたときに、サウンドチームが思っていることとズレがある。彼らの才能と、ゲームへのこだわりが、いつもぶつかり合っています。 サウンドの方々にはDJプレイ後、熱が冷めやらぬままに鉄拳ミュージックの魅力を中心にコメントをいただいた。 以下、 ◆名前・現在の所属・鉄拳シリーズでの初仕事 ◆井上拓・バンダイナムコゲームス・『TTT2』 井上: 今日はナムコの曲で、鉄拳以外にもリッジレーサーやパックマン、塊魂などをかけました。鉄拳の音作りは、ゲームミュージックというよりも、ガチのクラブミュージックっぽいところが魅力だと思います。 ◆柿埜 嘉奈子・バンダイナムコゲームス・『鉄拳5』 柿埜: 意外と幅広いところが魅力です。テンポがいい、闘争心を駆り立てるということをベースに、様々なジャンルを取り込んでいます。最近ではダブステップが多いのですが、鉄拳6ではミクスチャー寄りでした。 ◆佐宗綾子・SuperSweep・『鉄拳2(PS版)』 佐宗: 『鉄拳2』の頃はキツい音があまりなく、クラブでかけることも想定していなかったので、昨夜は時間をかけてキックを足しました。初期はメロディ重視でした。最近はメロディよりも雰囲気のカッコよさを重視しているという印象です。鉄拳はデジロックというイメージがあったのですが、『TTT2』はダブステップ。時代の流行りモノを、うまいこと取り入れていますよね。 ◆岡部啓一・MONACA・『鉄拳2(PS版)』 岡部: ベースになっているのはハード目のロックとダンスミュージックの融合ですが、ネタっぽいキャラと同じくネタっぽい曲も多い。カッコイイ曲の中にシニカルなものや面白いものを入れていけるところが、鉄拳の持ち味だと思っています。鉄拳初期はいわゆるゲーム音楽的な音楽だったのですが、ハードが進化したことで表現できる幅が広がり、『鉄拳3』ではゲーム音楽っぽくないものを目指しました。最近は映画を模倣しているようなゲーム音楽が増えてきているので、一周まわってゲームならではの良さを考え、単純に原点回帰でない新しい面白みのある音楽を作れたらと思っています。 ◆ 細江慎治・SuperSweep・『鉄拳1』 細江: イベントに向けて、初期から最新作までの曲を全部聞いたら、時代によって全然違っていて面白かったです。鉄拳の音楽は時代に敏感だと思います。特に『鉄拳3』からは時代の最先端の音楽をいち早く取り入れていますね。現在はダブステップが流行っているので、『TTT2』はダブステップだらけ。ゲーム音楽の中では珍しいです。 ◆ 佐野信義・DETUNE・『鉄拳1』サウンドトラック 佐野: 鉄拳のサウンドチームは、今時珍しいくらい好き放題やっていますね。普通は、プロデューサーの方針にサウンドの人が乗っかるというかたち。ナムコサウンドチームは、勝手にやって「しょうがねえな」と許してくれる、というか諦めてくれる(笑)。これって、独特な関係だと思いますよ。他のメーカーさんではないです。15年以上の付き合いなので気心が知れているということもありますが。
KORG M-01

ニンテンドーDS用ソフト『KORG M-01』でのプレイ「クラブは音数が少ないほうが鳴りがよいので、同時発音数が12音のコレは鳴りがよいんです」

◆遠山明孝:バンダイナムコゲームス・『鉄拳3(PS版)』
遠山明孝

遠山明孝氏

遠山: 鉄拳ミュージックは、ラウンド開始からテンションが高く、対戦格闘音楽としての押しの強さが特徴です。歴代の音楽を改めて聴いてみると、担当者によって音楽ジャンルは違うのですが、ちゃんと世界観が保たれている点も魅力の一つだと思いました。 『TTT2』のミュージックディレクターを務めた遠山氏には、『TTT2』における音作りのねらいについても聞いた。 遠山: 『TTT2』は『TTT』から12年ぶりとなるのですが、当時のオリジナル楽曲スタッフである佐野氏、岡部氏に参加してもらうのが一番の目的でした。12年の年月でそれぞれの進化している部分、変わらず持っている物を確認できて楽しかったです。原田PDとは初代鉄拳タッグトーナメントからの付き合いになるのですが、楽曲に対して求めている物がはっきりしているので凄くやりやすいです。 と、実際に『鉄拳』シリーズの音楽をつくってきた歴代のコンポーザーたちのこだわりを聞いたが、「制作 VS 音楽」のやり取りの内情を原田氏はイベント中にも明かしていた。 原田: 16年間もめ続けてますよ(笑)たとえば、「これいいですね」と言うと、「これラフなんで」と言われ、「自信作だから聞いてくれ」と渡された曲は「これ鉄拳じゃないよね」となってしまう。遠山と柿埜とは気が合うのですが、佐野さんとはいつももめています。 長い歴史ある『鉄拳』シリーズ、そしてさらに長い歴史あるナムコサウンドチームのDNAが、この独特の関係、楽曲を生み出しているのだろう。 ⇒ (後編へ) https://nikkan-spa.jp/116598 【インタビュー】鉄拳×秋葉原MOGRA ゲーム音楽とクラブの素敵な関係 取材・文・撮影/林健太
鉄拳タッグトーナメント2 オリジナルサウンドトラック

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