利益100万円のラーメン屋、いくらで買えるの?――連続投資小説「おかねのかみさま」

 みなさまこんにゃちわ大川です。

 連続投資小説『おかねのかみさま』。
 連載も五回目です。

※⇒前回「その人誰ですか?」


〈第5回 株ってなんですか?〉

(※前回までの『おかねのかみさま』)

「けんたくん」
「はい」
「0に賭けると何倍ですか?」
「…知りません」
「知らないものに全額賭けるのはどうしてですか?」
「……」

「けんたくん。勝つために必要なのは、知り尽くすことと計画です。そして知り尽くしても勝ち負けは必ずあり得るものですから、死なない習慣も大事です。けんたくんのお金はまた稼げるお金ではなくて、命を削ったお金ですから、いつまでもあると思わないほうがいいでしょう」
「ウンウン」
「…」

「さぁ、どうしますか」

「…わかりました…勉強します。何から勉強したらいいですか…」

「おー」
「オー」

「声揃えるのやめてもらっていいですかね」

「よろしい。それでは勉強をはじめましょう。じゃあその45万円で株でも買いましょうか」

「株…」
「カブ…」

※   ※   ※   ※

「さ、そうなったらカジノはもう出ましょうか」
「ゾッス!!!」
「またくるねー」

新宿区歌舞伎町

「あのー」

「はい」
「死神さんもついてくるんですね」
「仕事だからね」
「仕事めっちゃ楽しんでますよね」
「そうかな。どう?」

「テンショク…」

「そうなんだ…」

「仲良くしてもしなくてもいいですけど、死神さんはこれからずっと一緒ですから、やさしくしてあげてください」

「はい…」

「さ、じゃあ株の勉強でもしましょうか。けんたくん株わかる?」

「わかりません。でも持ってたらすごく値段が上がるとかは聞いたことあります。だけどニッケイヘイキンとかは漢字が多いのでわかりません」

「だよね。けんたくんは砂糖のおウチに住んで歌舞伎揚げ食ってるアリさんみたいな人だから、なんというか、アレだよね」

「ウケル」

「ウケルな!」

「じゃあけんたくん。あそこに見えるラーメン屋さんが、一ヶ月に100万円くらいの利益が出てると仮定しましょうか」

「はい」

「毎日食材を仕入れて、一杯750円のおいしいラーメンを売って、お給料とかお家賃とかガス代とか水道代とかを払って、最後に残るお金が100万円」

「はい」

「あのお店、ほしいですか?」

「ほしいってどういうことですか?俺、ラーメンつくったことないし、バイトさんを集めるのも大変そうだし、もらってもすぐにお店をダメにしちゃいそうだし、どうしたらいいんだろう」

「そうですね。でもそれは実は『店主』さんのお仕事で、オーナーのお仕事ではありません。というかお店を行う上でオーナーには役割は特にないんです」

「役割がない?」

「はい。オーナーはお金を提供して、働く場所を提供する。その舞台で自分の能力を活かして働く人がいて、たまたま立地や味や価格が支持されて利益が残る店になる。これが企業活動の最低単位です」

「へーーーーーーーーー」

「で、その企業活動から上がったお金はオーナーのものになります。つまり毎月100万円はオーナーに入り、そっから税金とかも引かれたりしますが、基本的にオーナーが利益を手にします」
「でも、それってなんかズルくないですか。お店で一生懸命おいしいものを作ってるひとたちの給料は変わらないのに、」
「いいえ。これが資本主義と呼ばれるものです」

「しほんしゅぎ…」

「はい。けんたくんにも先祖がいますよね」
「はい。確か昔から畑仕事をしてたって聞いたことが有ります」

「そう。その畑仕事ですが、畑がなかったらなにもできないでしょ。つまり、畑が自分のものではなかったら、誰かの土地で働かせてもらうしかないんです。そしてその畑でとれた作物から、お給料をいただく。これがお店にかわっただけです」
「んー、まぁそうですけど、なんか感じ悪いなー。もっとみんなで楽しく働いたりとかしてたんじゃないですか?」

「このイトミミズ」
「!!!」

「いいですかけんたくん。人が生きていくということは生半可なことではないんです。土地や作物を奪い合い、策略や謀略を繰り返し、たくさんの争いの上に、かろうじて平和を保つために行き渡っているのが資本主義です。それ自体を否定するのも結構ですが、自分がいつの間にか参加しているゲームのルールを誤解してたら、いつまでたってもクスブリです」

「…」

「ということで、株の話にもどりましょう。株というのは、あのラーメン屋さんの一部を買うことです」

「一部?」

「はい。毎月100万円の利益が出るラーメン屋さん、45万円で買えるわけないでしょ。そんなもの、お店のオーナーが断ります」

「なるほど」

「では、例えばラーメン屋さんの10000分の1だったらどうでしょう。毎月100円の利益が出るものは、けんたくんならいくらで買いますか?」

「ずいぶん少ないですね…。そうだな。1000円くらいかな」

「よろしい。それがあなたの『買い注文』です」

「オー」
「知らなかったの?」
「ウン」

「あなたの買い注文は10000分の1を1000円。その一方、ラーメン屋さんのオーナーがその価格でチョッピリ売るかどうかはオーナーさん次第です」

「なるほど。別にお金に困ってなければ、1000円もらってそれだけ売っても意味ないですもんね」
「ちょっと頭良くなってきてますね。そういうことです。だから、けんたくんがまずはじめに探すべき株は『既に売り注文が出ている株』です」

「そんなラーメン屋さんあるんですか?」
「あります」

「どこに?」
「市場です」
「しじょう?」
「シジョウ…」

次回へつづく

【大川弘一(おおかわ・こういち)】
1970年、埼玉県生まれ。経営コンサルタント、ポーカープレイヤー。株式会社まぐまぐ創業者。慶応義塾大学商学部を中退後、酒販コンサルチェーンKLCで学び95年に独立。97年に株式会社まぐまぐを設立後、メールマガジンの配信事業を行う。99年に設立した子会社は日本最短記録(364日)で上場したが、その後10年間あらゆる地雷を踏んづける。

Twitterアカウント
https://twitter.com/daiokawa

2011年創刊メルマガ《頻繁》
http://www.mag2.com/m/0001289496.html

「大井戸塾」
http://hilltop.academy/
井戸実氏とともに運営している起業塾

〈イラスト/松原ひろみ〉

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