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若者が生半可な投資知識をつけると「コモノ」になる――連続投資小説「おかねのかみさま」

 みなさまこんにゃちわ大川です。
 1週間お休みをいただきました。

 連続投資小説『おかねのかみさま』。
 連載の四回目です。

※⇒前回「投資とギャンブルの違いって?」


〈第4回 そのひと誰ですか?〉

(※前回までの『おかねのかみさま』)
「投資とギャンブルの違いはわかりました。俺がさっきやったのは投資じゃなくてギャンブルだ。だけど、俺が寿命を売ったカネで投資をすれば、もう寿命が減ることはないだろ。そもそも俺が寿命を売ること自体がギャンブルだし、俺は自分の人生を激変させていきたいんだ。だからこのギャンブルでカネを得て、それをしっかり『投資』してったらいいんだろ」

「う、うん。でも」

「でも?」

「たいへん申し上げにくいんですが、けんたくんの寿命の値打ちが少し減りまして…」
「!!?」

「1年で90万円になってるね」
「それも減るの!?」
「そうなんだよねー」
「じゃあ、半年だと45万円?」
「おっ、計算早い」
「…」

「どうする?」

「やるよ。そのかわり、なんか手数料の低いゲームを教えてよ。俺そこでがんばって102%を続けてみるから」

「ほんとに?」
「やる」

「わかりました。ピピ。はいじゃあこれ45万円。おーしぶとい。まだ生きてる」
「いつも軽いなー。じゃあ次はどこに行くんですか?」

「そうだなー。じゃあ、カジノでも行きましょうか」
「カ、カジノ!!!?」

※   ※   ※   ※

 新宿区某所。

「ウィー」
「ゾッス!!!」
「…」
「いやー、涼しくなったねー景気どう?」
「ゾッス…」
「そうかー。まぁそういうときもあるよねー」

「あのー」

「ん?なんだい?」
「いろいろと質問があるんですが」
「あとで聞きます」
「…はい。で、僕はここでどう賭けたらいいんでしょうか。さっき聞いたみたいにチョコチョコ賭けて、102%を目指していったらいいんでしょうか」

「ちがいます」
「えっ?」

「健太くんはここに決断をしに来たんです」
「え!!!でも!さっきギャンブルじゃなくて投資をしなさいって言ったじゃないですか!」

「えぇ。投資をするという行為は全く問題ないんですが、手堅い投資というものには、実はマイナス面があるんです」

「マイナス面?」

「はい。けんたくんの人生の価値、さっき年間90万円まで下がったでしょ」
「はい、悔しいけど、僕が競馬で負けたからですよね?」

「ちがいます。知識を得ることで臆病になったからです」
「???」

「けんたくんは頭がピーなので、こう言うとわかるかもしれません。マジメなカメさんはたくさん勉強をしました。そしてカメさんはそこそこの大学を出て、マジメに働くことになりました。マジメに働いたカメさんは、マジメに働いてお給料をもらって死にました」

「はい」

「一方ウサギさんは、マジメに働くのがイヤでした。ウサギさんはギャンブルで大勝ちし、たくさんお金が入ってくると確信して、たくさんお金をつかいました。ウサギさんは本当に楽しい時間をたくさん過ごし、カメさんが経験できないことにたくさん出会いました。ウサギさんは、

『世の中楽勝だピョン』

と思いながらギャンブルを続け、数年後に全てを失い死にました」

「はい…」
「こういうアップダウンを、ボラティリティといいます」

「ぼらてぃりてぃ?」

「はい。ウサギさんの人生の振れ幅が±100だとしたら、カメさんの人生の振れ幅はどれくらいだとおもいますか?」
「せいぜい、7か8くらいかな…」

「そうですね。そのとおり。ボラティリティが低いということは、カメさんの人生に大勝ちの瞬間が訪れる可能性が低いということです」

「でも!カメさんだって宝くじにあたるかもしれないし!お金がなくたって心配がなければ幸せかもしれないじゃないですか!」

「このチンアナゴ」
「!!!」

「いいですかけんたくん。けんたくんの言うとおり、お金と幸せには直接の相関性はありません。お金が貢献できるのは、その人の選択の自由度を増やすことだけで、選択肢が増えて逆に不幸になる人もいるくらいですから、幸せとは関係ありません」
「…」

「ちなみに宝くじの返戻率は45.7%ですから、ギャンブルとしてもイケてません」
「…」

「でですね、競馬場で投資とギャンブルの違いについて学んだけんたくんは、半端な知識をそのままポリシーにしたために、ボラティリティが下がったんです。けんたくんのような若者がボラティリティを下げるということは、別の言葉でいうと『コモノ』になったということで、結果的に生半可な投資知識をつけたギャンブル好きとして、人生の価値が下がってしまったという訳です」

「じゃあ…どうすれば…」

「勉強です。勉強というよりも調査です。カジノのゲームのように、運がすべてのものは調査しても意味がないですが、世の中には調査すれば勝率が上がるゲームがたくさんあります。挑戦をする場所とタイミングを知るための勉強をすることで、あなたの人生の価値が上がります」

「あのー」
「はい」

「さっきからかみさまの横にいるガイコツみたいな人はなんですか?」
「あ、だいじょうぶ気にしないでください」
「気になります」
「だよねー」

「だれですか」
「死神さんです」
「!?」

「ボラティリティが上がってきた人間のすぐ横には必ず現れます。必ず現れるだけですから特に気にしないで大丈夫です」
「えー」

「さぁけんたくん。もろもろ鑑みて、いまカジノにいるあなた。どうしますか」

「…やります」

「!!!」

「やるんですけど、横で死神がめっちゃうなずいてるのが気になります」
「大丈夫。クセです。じゃあ、その45万円をどうしますか?」
「あのルーレットで、0に賭けます。いまの俺は0で、奇跡を起こすにはここでギャンブルするしかないから」

「ゲラゲラ」

「わらうな!」
「けんたくん」
「はい」
「0に賭けると何倍ですか?」
「…知りません」
「知らないものに全額賭けるのはどうしてですか?」
「……」

「けんたくん。勝つために必要なのは、知り尽くすことと計画です。そして知り尽くしても勝ち負けは必ずあり得るものですから、死なない習慣も大事です。けんたくんのお金はまた稼げるお金ではなくて、命を削ったお金ですから、いつまでもあると思わないほうがいいでしょう」
「ウンウン」
「…」

「さぁ、どうしますか」

「…わかりました…勉強します。何から勉強したらいいですか…」

「おー」
「オー」

「声揃えるのやめてもらっていいですかね」

「よろしい。それでは勉強をはじめましょう。じゃあその45万円で株でも買いましょうか」

「株…」
「カブ…」

次回へつづく。

【大川弘一(おおかわ・こういち)】
1970年、埼玉県生まれ。経営コンサルタント、ポーカープレイヤー。株式会社まぐまぐ創業者。慶応義塾大学商学部を中退後、酒販コンサルチェーンKLCで学び95年に独立。97年に株式会社まぐまぐを設立後、メールマガジンの配信事業を行う。99年に設立した子会社は日本最短記録(364日)で上場したが、その後10年間あらゆる地雷を踏んづける。

Twitterアカウント
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〈イラスト/松原ひろみ〉

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