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春一番さん3周忌。アントニオ猪木のモノマネは春一番がオリジナルの芸だった

 2008年12月、春さんは『チョットお先に天国へ』という歌をリリースした。それはポップミュージックの新しいマーケティングのひとつので、携帯電話の音楽配信サイトでダウンロードできる“シングル盤”。(ダウンロード数が一定の件数に達して)評判がよければCDも発売されるはずだった。

“ハイハイハイ
チョットお先に天国へ
お前よりチョットお先に天国へ
見送ってくれてありがとさんQ”

 ダメな夫はよくできたカミさんよりもひと足お先に天国へ行かせてもらいます。カミさんに先に死なれちゃったら、ダメな夫はひとりではメシも作れないし、そうじも洗たくもできない。お願いだから先に死なせてくださいね、という歌だった。

“ハイハイハイ
そんな顔して睨むなよ
お前よりチョットお先に天国へ
見送ってくれてありがとさんQ”

 なんにもできない夫がカミさんに先立たれたら、預金通帳とハンコのありかもわからない。どこに電話をしたらいいのかもわからないし、お葬式の出し方もわからない。なんにもできない甘ったれの夫はなんでもできるカミさんよりも先に死にたい、というけっこうわがままな願望。これはきっと春さん自身のほんとうの願いでもあったのだろう。

「元気ですか! バカヤロー、どうせ一度の人生だから好きな時に逝かせてくれよ、なぁ、母ちゃん」

 昭和のコミックソングを思わせる軽快なノリの歌と歌のあいだにはしんみりとした語りのパートがあった。セリフを読むときの春さんの声はもちろん“アントニオ猪木”になる。

「病気をしたころだったら、こんな歌、うたえませんよね。この仕事、断ってたでしょ」と春さんははにかみながら笑った。ある夏、春さんは原因不明の奇病で3カ月も入院し、ほんとうに生死のさかいをさまよった。

 それは2005年8月8日のことだった。“8・8”といえば、猪木さんが引退をかけて藤波辰爾が保持するIWGPヘビー級王座に挑戦し、60分フルタイムの死闘を演じた、あの日だ(1988年8月8日=横浜文化体育館)。気合の入ったプロレスファンだったらだれでも知っている歴史的な一日である。その日をわざわざ選んだわけではないけれど、春さんは“8・8”に体に異変を感じて入院した。

 それより何年かまえにも膵炎(すいえん)で入院したことがあった。黄疸(おうだん)。乾癬(かんせん)。もともと皮膚科系のいくつかの持病を抱えていた。入院先のJR病院の消化器科では腎不全と診断された。乾癬の治療のため免疫抑制剤をずっと飲んでいたが、皮膚科の薬については消化器科ではスルーだったのがまずかった。

 免疫抑制剤を飲むのをやめたとたん、こんどは原因不明の高熱が2週間以上もつづいた。胸部のCTスキャンを撮ってみたら肺膿瘍(はいのうよう)になっていた。消化器科から呼吸器科の病棟に移され、肺に管を通して膿を除去する手術を3回受けた。肺に膿がたまるということはウイルス性の感染症であることはまちがいなかったが、その原因となった病原菌をなかなか特定することができなかった。

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危篤状態に陥ってから…

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元気です!!!

奇蹟としか表現できない感動の物語。





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