夏の甲子園、「ドリームシート」導入で一変したバックネット裏の風景【第98回・高校野球】
ドリームシートで観戦する大阪の野球チームの少年に聞くと、「試合前に、警備員さんから『試合中はピースをしたり、携帯をいじったりしないように』と説明されました。チームメイトはテレビに映っているからとパフォーマンスをしましたが、ぜんぶ球場の係員さんに注意されてました」と話す。
また、近くで観戦していた20代の女性は「5回裏のグラウンド整備で、最前列の子供たちが一斉にトイレへ向かったのには驚きました。もしかして、この時にしか行けないのでしょうか…。日の当たる特等席で2時間も座っていると、ぐったりして寝ている子供もいたので、無理はしないでほしいです」と心配していた。
さまざまな違和感を覚える人も少なくないが、在阪のスポーツ紙記者は「昨年まで8号門クラブは席を確保するため、席取り禁止の注意アナウンスを無視して荷物を置く、先に座った人間には立ち上がるまで恫喝する、女性ファンのために席を確保するなどやりたい放題でした。多くの高校野球ファンが腹を立てたのも当然です。子供たちはまるで軍隊のようですが、なかなかプロ野球でもバックネット裏で観戦するのは難しいですから、これを機会に高校野球の魅力を味わい、憧れの舞台と感じてほしいです」とシート導入に期待を寄せる。
今大会の開幕日である7日には、熊本地震で被害が大きかった熊本県益城町にある益城中学校の野球部員18人が甲子園球場に招待され、ドリームシートで観戦したほか、始球式には阿蘇中央高校の倉岡主将、入場行進の先導役には東稜の山門主将が指名された。
日本中学校体育連盟の調査では、2015年度の軟式野球部員(男子)は全国で20万2470人で、10年前から約9万3000人減った。対して、サッカー部員は10年前から約2万2000人増えて23万8007人。野球人口が減るなか、野球の人気はサッカーに抜かれることとなった。「ドリームシート」はまさしく野球と白球を追いかける子供たちの夢となるのか期待したい。 <取材・文/北村篤裕>
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