更新日:2024年05月30日 19:20
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若手4人組バンドの「甲子園応援曲」が炎上…浮き彫りになった“日本の音楽シーンが抱える課題”

 ロックバンド「ねぐせ。」が歌う『熱闘甲子園』(ABCテレビ、テレビ朝日系)の主題歌「ずっと好きだから」をめぐり炎上騒動が起きました。

「外野」をネガティブな意味で使用、歌詞テロップに誤字も

 同曲の予告動画の歌詞テロップで、“歓声”が「観声」と、“縁”が「緑」と誤表記されていたり、野球のテーマソングなのに「外野」という言葉をネガティブな意味で使っていたりすることに批判の声があがったのです。(誤字は修正済)  バンド側のリアクションもお粗末でした。リーダーでドラムのなおとが5月23日に自身のXに投稿した「誤字してしまったこと、本当にメンバーで気付けなかったのはダメだと思ってます。かなり多方向に失礼なことをしてしまいました。」という謝罪文の稚拙さを指摘する声が相次いだのです。  間違いは誰にでもあることですし、その後すぐに修正をして、至らない点を認めたことはよかったと思います。

そもそも曲がプロの水準に達しているのか

 しかし、仮に誤字がなかったとしても、この曲がプロフェッショナルの水準に達しているかを問われたら、答えづらいところです。そもそもなぜこういうバンドが簡単にデビューできてしまうのか。 「ねぐせ。」のメンバーはアイドル的なルックスでフォトジェニックです。曲調も激しすぎないギターロックで、とっつきやすいポップさがある。単純に売れそうです。  けれども、それはあくまでも表面、外皮が整っているに過ぎず、ボキャブラリー、韻の踏み方、メロディセンス、コードワーク、アンサンブル、アレンジメント。いずれも目を引く要素はありません。  ラップのような節回しで<前を見てる君に世間の外野なんて聞こえない 聞こえるのは歓声日々に送る宣誓 時に我慢反省 だから今が完成 かなり辛い汗と風に載せて送るファンファーレ>と歌ってから、“Wow Wow”のコーラスが続く構成は手垢がついた手法です。  これをパロディやパスティーシュではなく、大真面目にやっている時点で先行作品に対する視点が欠けている。過去に対する畏れがないのですね。あえて無知なフリをしているのではなく、本当に丸腰のまま音楽をやっている。不用意な人たちがプロになってしまっているのです。
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「音楽の質は上がらず、数だけが増えた」現状
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音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4

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