楽しく生きてるだけ――連続投資小説「おかねのかみさま」【第一部完】
学「そうじゃ。けんたくんはどうするんじゃ?」
死「ンー、キープ」
マ「似合う…」
学「似合うなー」
村「……そうか。実際な、俺心配してたんだよ」
マ「なに?」
村「俺な、このまま特になにもなく、死んでいくのかなって思ってた。会社いって仕事して、酒のんで、朝起きて、会社いって、仕事して、酒のんで、朝起きて。俺さ、出版社つとめてただろ。いろんな派手な連中見てきたんだよ。もちろん尊敬できる奴ばっかりじゃないけどさ、正直どっかで羨ましかった。その度に自分が守られてる世界を言い訳に納得してきたんだけどな、そんな世界も突然なくなって、気づいたらかろうじて生きてる感じになったんだ」
死「……」
マ「でも楽しく生きてるだけじゃだめなの?そりゃさ、お金持ちってわけじゃないけどさ、むらちゃん私から見てもまいんち楽しそうよ」
学「ママな、ちがうんじゃ」
マ「なぁに? なにがちがうの?」
学「村田が巻き込まれようとしてる世界はな、自分に言い訳もしなくていい世界なんじゃ」
死「オー」
マ「なぁにそれ?」
学「例えばな、いいくらしとか、いいくるまとか、いいおうちとかは結局誰かと比べるだけの話なんじゃ。勝ったとか負けたとか、小さい池の中で優劣を競ってるだけのことじゃ。つまりその小競り合いに勝つために貴重な時間を割いて、いろんなモノや立場を自分が費やした時間の言い訳にしてる。世の中はそんな連中の佃煮じゃ。でもな、いまここでガミちゃんが現れたということは、このアホ面中年ボーイにはじめてのチャンスが訪れたということじゃ。つまりあれじゃ。何言うか忘れた」
死「エヘ」
マ「なんとなくわかるような気もするけど、平和が一番なんじゃないのかしらねぇ…」
学「それもわかる」
村「まぁ…あれだな…。これはきっと…最後のチャンスなのかもな……。よろしく」
死「オウ」
第一部 完
【大川弘一(おおかわ・こういち)】
1970年、埼玉県生まれ。経営コンサルタント、ポーカープレイヤー。株式会社まぐまぐ創業者。慶応義塾大学商学部を中退後、酒販コンサルチェーンKLCで学び95年に独立。97年に株式会社まぐまぐを設立後、メールマガジンの配信事業を行う。99年に設立した子会社は日本最短記録(364日)で上場したが、その後10年間あらゆる地雷を踏んづける。
Twitterアカウント
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2011年創刊メルマガ《頻繁》
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「大井戸塾」
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井戸実氏とともに運営している起業塾
〈イラスト/松原ひろみ〉
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