大仁田厚に憧れて――WWEも評価する“弾丸戦士”田中将斗がZERO1に止まる理由【最強レスラー数珠つなぎvol.8】
――2001年にFMWを離脱し、2002年にZERO-ONEに入団されました。ECWでの活躍もあり、どの団体でも入団できたと思うのですが、なぜZERO-ONEだったのでしょうか。
田中:全日本とZERO-ONEに主に出場していたんですが、僕は全日本に「一番優先するのはZERO-ONEです」と言っていたんですよね。それは、最初に全日本に話に行ったときに上がれない状態があって、主な生活の基盤を整えてくれたのはZERO-ONEだったからなんです。その後、全日本から入団のオファーもあったんですが、ZERO-ONEと入団の話が進んでいたので、そのままZERO-ONEに入団しました。「もっと出すから」とも言われたんですけど、金額の問題ではないからと断りました。15年以上前の話です。
――15年以上、ZERO1(当時ZERO-ONE)でずっと続けているのはなぜですか。
田中:現状を見ても分かる通り、正直に言って苦しいですよね、ZERO1は。いい話も何年か前にちょこちょこあったりしたんですけど、でもなぜ辞めなかったかと言うと、FMWを辞めて最初に良くしていただいたし、苦しいといっても生活できないわけじゃないので。それだったら僕はZERO1に愛着がある。同年代の大谷(晋二郎)が社長をしているというのも大きいと思います。橋本(真也)さんから代が変わるとき、僕がやれと言われても絶対やれなかったです。苦しいところの社長をやれと言われても、やりたくないじゃないですか、人間。大谷が社長になったっていうのは、僕の考えではあり得ないことなんです。そんな中で、自分だけいい話に飛びつけないです。「なんでそっちに行かなかったの?」と言われるし、他の人が聞いたらバカだなと思うと思いますけど。
――これからZERO1をどうしていきたいですか。
田中:いま20代でガンガンやれる選手というのがそんなにいないので、若い人を育てなきゃいけないというのがうちの課題です。若い人がいないと、新しい人も入ってこないだろうし。いまチャンピオンの佐藤耕平も39で、どちらかと言うと上の世代に入ってきていて、僕なんかもう44なので。本当は小幡(優作)とかがトップどころに行かないといけないんですよね。
――世代交代をしなければいけない?
田中:でも簡単には譲りたくない。自分が認めていない奴と世代交代するつもりはないんです。お客さんから見ても、「田中よりあいつのほうがすごい」と思われる存在が出てこないとダメですよね。言うのは簡単ですけど、僕とか大谷を超えられる人はなかなか出てこないですよ。歳ですけど、元気ですからね。「衰えとか感じますか?」と聞かれるんですけど、全くなにも感じないんですよね。不思議なくらいで。そんなにヤバいケガもないし、体力がなくなったとかパワーやスピードが落ちたとかも全くない。いつ衰えていくんだろうっていう、そっちもなんとなく楽しみですね(笑)。怖いですけど。
――この連載では「強さとはなにか」を探っているのですが、強さとはなんだと思われますか。
田中:うちのいじめ撲滅のコンセプトでもあるんですけど、何度でも立ち上がる姿っていうのが一番強さに繋がるんじゃないかと思います。ケンカとかしても、殴っても泣かないで向かってくる奴とか怖くてしょうがないじゃないですか。挫折を味わったとしても、そこから立ち上がっていこうという気持ちがある人は強い。いろんな挫折を味わって、そこでシュンとなってやる気がなくなってしまうんじゃなくて、どん底を味わったとしても、這い上がってやろうという気持ちがある人って強いし、憧れます。
――レスラーになって、どん底だったことは?
田中:失恋ですね(笑)。失恋から立ち上がるときが一番苦労します。失恋は突然やってきますからね。常にいる人がいなくなると、精神状態がヤバいですよね。それ以外は、絶対に立ち上がる自信があります。僕はなにが取り柄かと言ったら、もうプロレスしかないので。どん底を味わっても、プロレスをやらなきゃいけないと思ったら立ち上がれる。プロレスに関しては、僕は大丈夫です。
――ありがとうございました。では、次のレスラーを指名していただけますか。
田中:大日本プロレスの関本大介選手を。プロレスラーとはなんたるかというのをすべて持っているんじゃないかなと。見た目もそうだし、プロレスに対する情熱がすごくて、練習も真面目です。それにだれとやってもすごい試合ができる。組まれたカードでお客さんを楽しませなければいけないというのは、プロレスラーとして大事な一つだと思うんですが、その中で関本大介はだれとやってもお客さんを沸かせる試合をする選手です。
「プロはお金にこだわるべき」としながら、自身がZERO1に止まるのは「お金ではない」と話す。矛盾しているかも知れない。しかし、だからカッコいい。不器用な生き方かも知れない。だからカッコいい。田中は大仁田厚の生き様に憧れたと言うが、田中将斗の生き様こそ憧れずにはいられない。
強い人というのは、こういう人のことを言うのだと思った。田中将斗は、本当に強いレスラーだと思う。
【PROFILE】田中将斗(たなかまさと)】
ZERO1所属。1973年2月28日、和歌山県和歌山市生まれ。高校時代ラグビー部に所属し、オール和歌山に選出される。卒業後は住友金属ラグビー部を経て、1993年にFMW入門。ECWに長期遠征し、リングネーム「MASA TANAKA」として日本人で唯一ECW世界ヘビー級王座に就く。2002年、ZERO ONE入団。全日本プロレス、新日本プロレス、大日本プロレスなど、メジャー、インディー問わず数々の団体で長きに渡りトップレスラーとして活躍している。180cm、91kg。Twitter:@masato_dangan
(取材・文/尾崎ムギ子 撮影/安井信介)
尾崎ムギ子/ライター、編集者。リクルート、編集プロダクションを経て、フリー。2015年1月、“飯伏幸太vsヨシヒコ戦”の動画をきっかけにプロレスにのめり込む。初代タイガーマスクこと佐山サトルを応援する「佐山女子会(@sayama_joshi)」発起人。Twitter:@ozaki_mugiko
■ZERO1すしざんまいプレゼンツ「奉納プロレス 第14回大和神州 ちから祭り」
https://www.z-1.co.jp/event/detail_20170326.html#id103
【開催日】2017年3月26日(日)
【開場時間】12時00分
【開始時間】13時00分
【会場】靖国神社 相撲場
■ZERO1プロレスリングZERO1 新木場大会 新生ZERO1 ドリーム・シリーズ ~誕生の陣~ 天下一Jrリーグ戦 開幕戦
https://www.z-1.co.jp/event/detail_20170404.html#id132
【開催日】2017年4月4日(火)
【開場時間】18時30分
【開始時間】19時00分
【会場】新木場1st リング
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