暴走戦士の“頭脳”ポール・エラリング――フミ斎藤のプロレス読本#017【ロード・ウォリアーズ編2】
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エラリングはこう考えた。レスリングに限らず、どんなビジネスでも、現場での業務を担当するスタッフとそれをマネジメントするスタッフ、商品を制作するセクションとそれを販売・管理するセクションがある。
ロード・ウォリアーズという“事業”においては、リングの上での仕事(試合)はホークとアニマルが担当し、それ以外のすべてのデスクワーク、フィールドワークは専属マネジャーが引き受ける。
アニマルとホークは、同郷の先輩エラリングのレクチャーに耳を傾けた。
エラリングはこうも考えた。レスリング・ビジネスとはポーカーのようなものだ。相手がいい手を持っている。自分もいい手を持っている。だが、おたがいのカードは見えない。絶対に負けない切り札とはなにか。それはジョーカーだ。カードゲームにたとえるならば、ロード・ウォリアーズは最強のジョーカーなのだと。
WWEもNWAもAWAも、おたがいにどのカンパニーがいちばん高い手を持っているかを探り合いながら同じテーブルでポーカーをプレーしている。ロード・ウォリアーズは意志を持ったジョーカーだ。だから、ホークとアニマルとエラリングの3人の価値をもっとも高く評価してくれる“手の内”に入っていけばいい。
ビジネスとは、ある程度のキャンブル性を内包しているものなのだろう。あえてリスクを冒さなければならない場合もあるし、リスクが高いとわかっているときは、ゲームをおりることも大切だ。
エラリングは、自分よりもちょっとだけ年下のホークとアニマルにこう話して聞かせた。
マネーがすべてかといえばそうではない。経済的な安定も大切ではあるが、いくらマネーを稼ぎ、大きな家を建て、いい自動車を運転し、欲しいものを買うことができたとしても、それ自体にはあまり意味はない。
人生を“70年”のブロックとして考えてみよう。少年時代の10数年間、青年になってからの20数年間を含めてもたったの70年だ。われわれはプロレスを職業として選択したが、現役として活動できる時間は長くても20年くらいだろう。一生の仕事といっても、じつはそれほど長い時間ではない。
生きていくということは、ある段階まではあらかじめ決められたレールの上を走っていくことなのだろう。両親に育てられ、学校に通い、必死になって働き、そして気がついたときには一生のうちの3分の2くらいは終わっている。
“ロード・ウォリアーズ”もホーク、アニマル、エラリングのそれぞれの人生のなかではひとつの通過点に過ぎない。こうして3人は共通の目的意識をもって動きはじめたのだった(つづく)。
※文中敬称略
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文/斎藤文彦 イラスト/おはつ
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