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ロード・ウォリアーズの肉体SFX至上主義――フミ斎藤のプロレス読本#016【ロード・ウォリアーズ編1】

ロード・ウォリアーズの肉体SFX至上主義――フミ斎藤のプロレス読本#016【ロード・ウォリアーズ編1】

本日からスタートした『フミ斎藤のプロレス読本』新シリーズ、ロード・ウォリアーズ編(全15話)。エピソード1は「暴走戦士の肉体SFX至上主義」の巻。(写真はロード・ウォリアーズのパブリシティ・フォトから。Photo Credit: BruceKrietzman)

 198X年

 ロード・ウォリアーズ――人間ばなれした全身の筋肉、きっちりと剃り込まれたモヒカン刈りと逆モヒカン刈り、歌舞伎の“隈どり”を思わせるペインティング、そして鋼鉄のスパイクがちりばめられたコスチュームといったギミックの数かずは、ホークとアニマルの肉体至上主義を具現化した生身のSFXだった。

 アメリカ北部の雪国ミネアポリス生まれの無名のボディービルダーが超売れっ子プロレスラーへの華麗なる変身をとげたのは1983年6月。

 己の肉体だけを武器にノシ上がっていった男たちの生きざまに1980年代後半のアメリカ文化のもうひとつの側面を発見することができる。

 モヒカン刈りのアニマルの本名はジョー・ローリナイティス。1960年、ミネソタ州ゴールデンバレイ出身。逆モヒカン刈りのホークは1957年、ミネソタ州ミネアポリス出身。本名はマイク・ヘグストランド。

 ホークもアニマルもプロレスラーになるまえはこれといった仕事にもつかず、朝から晩まで汗の臭いが充満するジムでウェートトレーニングに明け暮れ、夜は生活費を稼ぐためにバーのバウンサー(用心棒)として働き、気がつくと20代の半分を無駄づかいしていた。

 無名時代のマイク=ホークとジョー=アニマルは、週に何度かジムで顔を合わせるトレーニング仲間だった。運命の糸で結ばれたふたりは、元プロレスラーのエディ・シャーキーのコーチを受け、プロレスの世界に飛び込んだ。

 タッグチームを組むことになったふたりは、南部ジョージアのプロモーター、オレイ・アンダーソンによってアトランタのローカル団体“ジョージア・チャンピオンシップ・レスリング”にブッキングされた。

 黒の革ベスト、黒の革キャップ、黒のサングラスという暴走族スタイルのタッグチーム、ロード・ウォリアーズに変身したふたりは、その後、髪をモヒカン刈りに剃り上げ、顔にペインティングを施し、鋼鉄製のプロテクターに身を包み、順を追ってウォリアーズのキャラクターを完成品に近づけていった。

 試合会場で売られるパンフレットに紹介されるプロフィルを「シカゴのスラム街出身。路地裏のゴミ箱をあさり、ネズミを食って飢えをしのいでいた」とデッチ上げたのもこのころだった。

 ある日、そんなウォリアーズの姿が、売れない悪役レスラーだったポール・エラリングの目にとまった。ホークとアニマルを結びつけた目に見えない2本の糸は、ここで3本めの糸と運命的な出逢いを果たす。

 ウォリアーズの専属マネジャーとなったエラリングは、プロモーターとのファイトマネーの交渉、スケジュールの管理からツアー中の飛行機やホテルの予約、レンタカーの手配に至るまでビジネス面での実務をすべてテイクケアするようになった。

 ラツ腕マネジャーの出現により、純粋にリング上の“ロード・ウォリアーズ”としての自我だけに集中できるようになったウォリアーズはトントン拍子にスター街道をかけ上がっていった。

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レスリング・ビジネスでの成功は単なる通過点でしかない

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