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ウォリアーズがやって来たヤァ!ヤァ!ヤァ!――フミ斎藤のプロレス読本#018【ロード・ウォリアーズ編3】

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ウォリアーズがやって来たヤァ!ヤァ!ヤァ!――フミ斎藤のプロレス読本#018【ロード・ウォリアーズ編3】

ロード・ウォリアーズは突然変異のスーパースターだったのか。(写真は“ジョージア・チャンピオンシップ・レスリング”のTVテーピング収録現場より)

 ホークにも雑誌を渡すと、あいかわらずゴロゴロしつつ――もちろん日本語で書かれた記事は読めないけれど――1頁ずつていねいにページをめくりながら、写真をながめ、ときどき「ガッハッハ」と笑った。おもしろい写真でもあったのだろう。  それからデビッド・シュルツの記事が載っているページを指さして「彼はまだ日本にいるのかい?」とぼくに聞いてきた。 「会ったことはないんだけどね。彼、レスリングをフェイクだといったTVアナウンサーをぶん殴っちゃっただろ。オレ、好きだな、そういうレスラー。きっと友だちになれるね」といって、また「ガッハッハ」と笑った。 「日本はどう?」とあたりまえ過ぎる質問をしてみると、アニマルがチラッとこっちをみて「ディファレント(変わってるね)」とひとことだけつぶやいた。  いったいなにが“変わってる”のか考えてみた。アニマルもホークも、アメリカで仲間のレスラーたちから日本のことをたくさん聞かされてきたはずだ。  ついに日本にやって来たロード・ウォリアーズは、成田空港で50人を超すプレスの出迎えを受け、空港内のVIPルームで大々的に記者会見をおこない、試合会場ではまたしても数10人のカメラマンたちからポーズ写真の注文を受け、その翌日には半日がかりでスタジオ撮影の仕事もこなした。  アニマルもホークも、そしてエラリングも、正直なところ、地球の裏側のジャパンで自分たちがこれほどまでにもてはやされるとは予想していなかったのかもしれない。  国技館の支度部屋の天井をながめながら、大きな体を持て余すようにしてボーッとよこになって時間をつぶしていたウォリアーズは、いったいどんなことを考えていたのだろう。  2年まえ、ミネアポリスで気楽な生活をしていたころのことだろうか。それとも、アメリカに帰ると待っている殺人的スケジュールのことだろうか。  ひょっとすると、自分たちの意思とは別の次元で“ロード・ウォリアーズ”というキャラクターが勝手に独り歩きをはじめてしまった現実に戸惑いを感じていたのかもしれない。  ドレッシングルームでふだん着のアニマルとホークの写真を撮ろうとスポーツ新聞の記者とカメラマンが集まってくると、エラリングが彼らを蹴散らした。「写真ならリングの上の自分たちだけを撮れ」とでもいいたかったのだろう。  そうだ。顔にペインティングをしていないウォリアーズはウォリアーズではない。だから、写真を撮るべきではない。過去のはなしを聞くことも許されない。
斎藤文彦

斎藤文彦

 エラリングが目で合図をすると、ホークとアニマルは「じゃあ、そろそろ準備をしますか」といった感じで、バッグのなかからチューブの絵の具を数本と油絵用の筆を3本、取り出した。  ロード・ウォリアーズに変身する時間だった――。(つづく) ※文中敬称略 ※この連載は月~金で毎日更新されます 文/斎藤文彦 イラスト/おはつ
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