更新日:2022年08月31日 00:46
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沖縄を守る自衛隊を沖縄のマスコミは「差別」していた?【評論家・江崎道朗】

沖縄県民の生命と安全を命がけで守っている自衛隊

 このように沖縄2紙によっていまも「自衛隊員」は不当な差別を受けている可能性が高い。なぜ法務省や日弁連が調査に乗り出さないのか、不思議でならないが、実はこの自衛隊が沖縄では、沖縄県民の安全と生命を守っているのだ。  那覇駐屯地にある陸上自衛隊第15旅団には、沖縄ならではの特別な部隊が存在している。  その一つが、緊急患者空輸を担任実施している「第15ヘリコプター隊」だ。  担任区域は沖縄全域及び奄美大島以南の鹿児島県で、常時航空機を待機させ、離島などに在住する緊急患者空輸の為の即応体制を維持している。  沖縄の本土復帰に伴い自衛隊が沖縄に配備された昭和47年、粟国島への初の緊急患者空輸以来、両県民の命綱として活動しており、平成29年6月29日現在で緊急患者空輸実績は9135件、9491名に及ぶ。この45年間で実に1万人近い沖縄・鹿児島県民が助けられたことになる。1年で200回以上出動している計算だ。  もう一つが、「第101不発弾処理隊」だ。  沖縄県の陸上で発見された不発弾の処理を任務とする隊長以下20名程度の高い技能を持つ少数精鋭の部隊で、常時1組3名が直ちに出動できる態勢を維持している。戦後70年が過ぎた今でも米軍が落とした不発弾などが発見されため、その処理が日常的に必要なのだ。
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陸上自衛隊那覇駐屯地に展示されている「不発弾処理」のパネル

 平成29年6月29日現在で不発弾処理の実績は3万6358件に及ぶ。1年で平均して800件、つまり一日2件以上処理をしている計算になる。  実際に担当者からも話を伺ったが、不発弾処理は極めて危険な作業であり、事故が起こればそれは即ち隊員の殉職を意味することにもなりかねないのだという。まさに命がけで沖縄県民の安全を自衛隊は守っている。そのためか、復帰から45年が経過し、自衛隊はすっかり沖縄県民から受け入れられるようになったという。  ところが、このような沖縄での自衛隊の「命がけ」の奮闘ぶりをなぜか沖縄2紙、つまり琉球新報も沖縄タイムスだけはほとんど報じていない。  連日、沖縄県民の生命と安全を守っている自衛隊に対して、あまりに不公平な扱いではないのか。2紙は、他の問題でも公正な報道をしていないのではないのか。そんな不満を背景に、石垣に拠点を有する「八重山日報」がこの春、沖縄本島に進出し、販売を始めた。  この八重山日報は、尖閣問題や中国の軍事動向など、これまで沖縄であまり報じられてこなかった安全保障問題にも力を入れているためか、沖縄本島でも購読者数が急増しているという。  マスコミの健全な発達のためには、マスコミ相互のチェックが重要だ。  八重山日報には法務省や日弁連と連携して、差別反対、人権重視の立場から、沖縄2紙による、自衛隊員に対する「人権侵害」疑惑についても取り組んでもらいたいものだ。  また、自衛隊の法的な立場を確定させるため憲法九条改正を検討している自民党も、自衛隊員に対する差別問題について徹底的に調査し、国会で議論をすべきであろう。憲法審査会の議題としてふさわしい案件であるはずだ。 【江崎道朗】 1962年、東京都生まれ。評論家。九州大学文学部哲学科を卒業後、月刊誌編集長、団体職員、国会議員政策スタッフを務め、外交・安全保障の政策提案に取り組む。著書に『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』(祥伝社)、『マスコミが報じないトランプ台頭の秘密』(青林堂)、『コミンテルンとルーズヴェルトの時限爆弾』(展転社)など
(えざき・みちお)1962年、東京都生まれ。九州大学文学部哲学科卒業後、石原慎太郎衆議院議員の政策担当秘書など、複数の国会議員政策スタッフを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究に従事。主な著書に『知りたくないではすまされない』(KADOKAWA)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』『日本占領と「敗戦革命」の危機』『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』『緒方竹虎と日本のインテリジェンス』(いずれもPHP新書)、『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(いずれも扶桑社)ほか多数。公式サイト、ツイッター@ezakimichio

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 ’17年、トランプ米大統領は中国を競争相手とみなす「国家安全保障戦略」を策定し、中国に貿易戦争を仕掛けた。日本は「米中対立」の狭間にありながら、明確な戦略を持ち合わせていない。そもそも中国を「脅威」だと明言すらしていないのだ。

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