更新日:2017年11月15日 18:02
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在韓邦人に「警告」を発した駐韓日本大使館の切迫度とは?【評論家・江崎道朗】

江崎道朗のネットブリーフィング 第13回】 トランプ大統領の誕生をいち早く予見していた気鋭の評論家が、日本を取り巻く世界情勢の「変動」を即座に見抜き世に問う!

早期に国外へ退避することが最良の安全対策

江崎道朗

江崎道朗(撮影/山川修一)

 朝鮮半島危機は、確実に迫りつつあるようだ。駐韓日本大使館が朝鮮半島有事を想定した、新しい「安全マニュアル」を4月1日、ホームページで公開した。その冒頭には、次のように記されている。 《緊急事態はいつ発生するか分かりません。しかし、ひとたび、緊急事態が発生すれば、大使館は全力をもって情勢の把握に取りかかります。そして、様々な手段を通じてみなさまとの連絡を試みます。このために、日頃から、在留届に基づく連絡体制などの既存の連絡網のほか、SJC(ソウル・ジャパン・クラブ)の連絡網、その他の組織での連絡網を活用し、重層的な連絡体制の構築に努めています。  緊急事態おける対応については、「緊急事態対処マニュアル」(28頁)をご一読の上、心構え、平素からの準備、緊急時の行動について熟知しておいて下さい》 「緊急連絡網を早急に整備しておきたい」旨の呼びかけが在韓邦人たちに対してなされているのだが、その理由は、朝鮮半島有事だ。 《第二次大戦後、朝鮮半島は38度線を境として、韓国と北朝鮮とに分断され、南北は深い対立関係にたっており、現在も休戦ラインを挟んで対峙した状態が続いています。特に、近年では、韓国側に向けた砲撃事件や水爆実験・人工衛星と称するミサイル発射実験等の行動を起こしており、予断を許さない状況です》  そのため、この新しい「安全マニュアル」には「緊急事態対処マニュアル」も掲載されていて、その冒頭でこう呼びかけている。 《緊急事態はいつ発生するかわかりません。緊急事態に備え、携行品等の準備をしておくとともに、家族や社内等で緊急時の連絡方法や対応要領等について予め話し合っておくことが重要です。(中略)  緊急事態発生の危険が高まった際には、早期に国外へ退避することが最良の安全対策です。このためにもパスポートの有効期限を確認しておくと共に、その所在を常に把握しておき、いざという時には直ちに持ち出せるようにしておいて下さい。》  ここで注目すべきなのは、《早期に国外へ退避することが最良の安全対策》と、韓国からの退避を勧めていることだ。確実に事態は緊迫しつつあることが分かる。  穿った見方をすれば、「事前に警告をしていましたよ。退避しなかった方が悪いのだ」という形で外務省・日本大使館は、有事が起こった際に邦人の安全確保を全うできなかった責任を追及されないよう予防線を張ったということかもしれない。  ともあれ、ゴールデンウィークには、多くの日本人が観光で韓国を訪れたが、こうした情報を果たして知っていたのだろうか。そもそも日本の旅行会社はこの情報を知っているのだろうか。
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北朝鮮による空襲、化学兵器攻撃に対してどうしたらいいのか
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(えざき・みちお)1962年、東京都生まれ。九州大学文学部哲学科卒業後、石原慎太郎衆議院議員の政策担当秘書など、複数の国会議員政策スタッフを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究に従事。主な著書に『知りたくないではすまされない』(KADOKAWA)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』『日本占領と「敗戦革命」の危機』『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』『緒方竹虎と日本のインテリジェンス』(いずれもPHP新書)、『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(いずれも扶桑社)ほか多数。公式サイト、ツイッター@ezakimichio

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