ECファッキンWの“隠し玉”クリス・ジェリコ――フミ斎藤のプロレス読本#115【ECW編エピソード07】
ライオン・ハートというリングネームは、コラソン・デ・レオン(ライオンの心)というスパニッシュを英語に訳したものだ。
カルガリーのインディー系団体でちょこちょこと試合をしていたら、日本のFMWからお声がかかった。ジャパン・コネクションはルーキーだったジェリコをメキシコへと導き、メキシコで仲よくなったウルティモ・ドラゴンがWARのドアを開けてくれた。
ライオン・ハートのビデオは、コレクターからコレクターの手をへて、やがてアメリカじゅうのマニア層へ流出していった。ポール・Eは、もう1年以上もまえからジェリコをブッキングしようとやっきになっていた。
ジェリコはジェリコでECWの存在を知っていたし、これから先のキャリアアップをプランニングする場合、やっぱりどこかでアメリカとの接点をこしらえておくべきだと考えていた。
カルガリー・スタイルの革のベストとロングタイツを身にまとったジェリコにとって理想のレスラー像はオーエンとベンワーだ。オーエンの兄はブレット・ハートで、ベンワーの師匠はダイナマイト・キッド。だから、ジェリコの体のなかにはブレットとキッドの遺伝子も組み込まれている。
ポール・Eは、そんなことをあれこれ考えながら妄想みたいなものをふくらませてる。アートとは、その精神を次の世代に伝えてこそアートである。
ECファッキンWはアヴァンギャルドな運動体。サブゥーもカクタス・ジャックも、レイヴェンもサンドマンも、ECWアリーナの空気のなかで化学反応を起こし、自分でも知らなかった自分になる。
いまのところ、2大メジャーリーグはジェリコがそこにいることにさえ気づいていない。ポール・Eはしばらくのあいだはこの状況がつづいていくれることを願っている。
ロウ・タレントを発掘すること。そのレスラーが才能をマキシマム(最大限)にディスプレイできる実践の場を提供すること。
ECファッキンWがECファッキンWでありつづけること。オルガズムは、来そうで来そうでなかなか来ない。
※文中敬称略
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文/斎藤文彦
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