容疑者の共通点は?「茨城日立 妻子5人殺害事件/東名高速追突事件」周辺取材で浮上した人物像
茨城県日立市の市営住宅で、妻を刺し殺したのち、妻の連れ子だった長女、自身の子ども4人を次々と殺害し、最後は自宅に火をつけた男・小松容疑者も、周囲からは「ドングリ」と呼ばれるなど、体は大きいが気の小さい、頼りない男と評価されていた。
「とにかく無類のギャンブル好きで、女好き。車や釣りが趣味で、カネ遣いも荒い。仕事は何をやっても続かず、奥さんに食わしてもらってるって恥ずかしげもなく言ってたね。でもヤンキーやヤクザではなかった」
小松容疑者のかつての同僚は、彼のダメさを物語るエピソードを披露しつつ、年下や後輩には横柄に振舞っていたことも指摘する。
「家では奥さんに『働きもしないで』と散々叱られてたからか、後輩や年下には相当厳しかったね。カツアゲみたいなこともしてたし、借りた物をパクったり転売したり……。子どものオモチャを売ってパチンコしてたってのもありましたね」
青年期を千葉県某市で過ごした小松容疑者だが、近隣の住人も、小松容疑者の身勝手さを感じたことが多々あったという。
「ボロい改造車に乗って、仕事もせず毎日ブラブラしてた。出会い系サイトにハマって、いろんな女性を横に乗せてたね。昔は気弱だったくせに、刺青入れて髪型もやんちゃっぽくしてね。車の運転も荒々しくて、近所では評判が悪かった」(近隣の住人)
小松容疑者は結局、妻に三行半を突きつけられ、事件前夜には離婚が決定したというが……。捜査関係者によると、小松容疑者は「妻から浮気をめぐる別れ話を切り出された」と供述しており、そのことに対して周囲に不満をもらしていたという。
そして報道の通り、腕力では自身に敵わない妻を殺害し、ほぼ無抵抗の幼い子どもたちを次々に殺害した。
これら二人の容疑者に共通する部分、それは、究極までの身勝手さもさる事ながら、強い者にはめっぽう弱く、弱い者は「ねじ伏せる」、もしくは「強く演じてみせる」という人格である事だ。少し昔には、自室に閉じこもって出てこない「引きこもり」の若者が問題視されていたが、引きこもりの若者たちもまた、両親や家族には辛く当たる場合が多い半面、社会に対しては大いなる引け目を感じ、弱者を自認した。
二人の容疑者もまた、弱者しかいない限られた空間でのみ威勢が良く、表の世界では弱くだらしなかった。彼らは、狭い空間でしか生きる事が、存在する事が出来ないがゆえに、弱者を巻き込み踏み台にして、周囲の人間を不幸にしてゆく。そしていま、このようなタイプの連中が引き起こす、我々にとっては理解できない動機の事件が増えつつあるのではないかと感じている。
<取材・文/伊原忠夫>
強い者には弱く、弱い者には強く…
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