新崎人生の輪廻転生・曼荼羅ひねりin ECW――フミ斎藤のプロレス読本#127【ECW編エピソード19】
極楽固めは、キャメルクラッチと変形スリーパーホールドの複合技。仏に仕える者が「地獄へ堕ちろ」なんていえっこないから、絞め技のコンセプトは「極楽へ行かせてあげましょう」「成仏させてあげましょう」となる。
曼荼羅(まんだら)ひねりは、ドラゴンスクリューの逆回転バージョン。曼荼羅とは(1)諸尊の悟りの世界を表現したもの(2)諸尊の像または象徴を一定の方式にもとづいて描いた図像(3)(全体の構成で)宇宙の真理を表す図。投げられたほうのレスラーの足が空中で曼荼羅を描く。
輪廻(りんね)は、バック宙返りでトンボを切りながら右足で相手の脳天にインステップ・キックをたたき込む難度D技。輪廻とは(1)車輪が回転するように衆生(しゅじょう)が三界六道に迷いの生死をかさねてとどまることのないこと(2)迷いの世界を生きかわり死にかわること。蹴り技の輪廻は、窮地に追い込まれたときの一瞬の逆転技になる。
お遍路さんの人生は、出逢いと別れのくり返しなのだという。初めて訪れた“ECWの地”は、ジンセイ・シンザーキをやがてまた再会できるであろう友人としてアクセプトaccept(受け入れる)した。
“トップロープ拝み渡り”“極楽固め”“曼荼羅ひねり”“輪廻”の日本的宗教観のようなものを知らなくても、新崎のプロレスを理解することはできる。
プロレスにランゲージ・バリアはない。ハードコア空間ECWとの遭遇と別離は、盟友ハヤブサとのまたしばしの別れをも意味していた。
プロレスラーの生身の肉体としての新崎は、久しぶりにアメリカの空気を吸ってすっかりハイになった。お遍路さんの巡礼としてもECファッキンWは実りのある寄り道になった、
静かに目を閉じた新崎は、みちのくの日常へと帰っていった。
※文中敬称略
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文/斎藤文彦
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