新崎人生の輪廻転生・曼荼羅ひねりin ECW――フミ斎藤のプロレス読本#127【ECW編エピソード19】
―[フミ斎藤のプロレス読本]―
199X年
むずかしい漢字がたくさん出てくる。新崎人生は弘法大師修行の遺跡といわれる四国八十八カ所の霊場を巡礼して歩くお遍路さんで、白使HAKUSHIはホワイト・エンジェルを無理やりジャパニーズっぽい発音に変換したアメリカ人が考えそうなナゾの東洋人キャラクター。
ひとつひとつの身体運動がメッセージになっているからランゲージ・バリアー=言語の壁がない。ECファッキンWはジンセイ・シンザーキを畏敬のまなざしで迎え入れた。
数珠。笠。つえ。和袈裟(わげさ)。頭陀袋(ずだぶくろ)。白衣(はくえ)。顔、上半身、背中に般若心経のテンポラリー・タトゥーをほどこす。
エグゼクティブ・プロデューサーのポール・ヘイメンは“新崎人生”と“白使”のちがいをあまりよくわかっていないようだったけれど、新崎自身のなかではこのふたつのキャラクター設定、パーソナリティー=人格はまったく異なるものになっている。
新崎がECWのリングに運んでいったのは、アップグレード・バージョンの白使だった。
ドレッシングルームはなつかしい旧友たちとの再会の場となった。WWE在籍時代、よく闘ったクリス・キャンディードとその妻サニーが長旅の労をねぎらってくれた。
新崎がよく知っているシェーン・ダグラスは“フランチャイズ”ではなくて、“担任の先生”ディーン・ダグラスだった。
バンバン・ビガロが遠くのほうからこっちを向いてパチンッとウィンクをした。主流派グループのサンドマンとトミー・ドリーマーが“握手の儀”にやって来た。
ECWのハードコアな観客はとことん欲ばりだった。ブートレッグ(海賊版)のビデオ、日本の雑誌、パソコンの画面のなかでしか観たことのない新崎とハヤブサの“本物”をセットで楽しもうとしていた。
アメリカのマニア層のあいだで出まわっているブート版ビデオには、どこからどういうルートをたどってニューヨークあたりまでたどり着いたのか、『全日本プロレス中継30』(日本テレビ系)でオンエアされた“世界最強タッグ”公式リーグ戦の抜粋やファイティグTVサムライ!(スカイパーフェクTV)の映像のがちゃっかり収録されている。
因果はめぐる小車(おぐるま)じゃないけれど、しばしの別れを告げてそれぞれ別べつの道を歩みはじめた新崎とハヤブサは、異国のリングで再会を果たした。
対角線上のコーナーにはサブゥーとロブ・ヴァン・ダムが立っていた。ここからまたむずかしい漢字がたくさん出てくる。
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