プロレス用語“インディペンデント”の定義――フミ斎藤のプロレス読本#126【ECW編エピソード18】
―[フミ斎藤のプロレス読本]―
199X年
“インディペンデント”という単語は、どうやらカタカナのジャパングリッシュ=和製英語である。
どこにもそんなマニュアルなんてないのに、インディペンデントの反対語はメジャー、メジャーの反対語がインディーということになっていて、それがごくふつうの日本語として使われている。
音楽のジャンルでいうところのメジャー・レーベルとインディペンデント・レーベルはメジャーとマイナー、巨大ブランドとプチ・ブランドの関係になっている。
日本でインディペンデントというカタカナ表記を最初に使ったプロレスラー/プロデューサーは大仁田厚だった。インディペンデントとマイナーはもちろん同義語ではない。また、プロレス用語のインディペンデントも、少人数のグループ、小規模な団体(興行会社)を指すものではない。
そもそも、インディペンデントindependentという形容詞・名詞にはマイナーなもの、ちいさいものといったニュアンスはまったくない。辞書には[形容詞](1)独立の、自立の、自主の、自治の、自由の(2)他に影響されない、独立独行の、自由の(3)他に依存しない、独自の、影響を受けない、別個の(4)他人の世話にならない、一本立ちの、働かなくても暮らせるだけの(収入のある)(5)[政治]党派に左右されない、無所属の(6)[教会]独立教会派(7)[数字・統計]量、関数が独立の(8)[文法]節が独立の、とある。
インディペンデントの反対語はディペンデントdependentで、この単語には[形容詞](1)頼っている、依存している(2)……次第の、……に左右される、……いかんによる(3)従属している[名詞](1)扶養家族、他人に頼って生活する人、寄食者、家臣、部下(2)依存物、従属物、といった意味がある。
インディペンデントの定義(1)から(7)のすぐあとに“プロレス”をくっつけると、プロレス団体の存在理由のようなものが浮かび上がってくる。じつは、すべてのプロレス団体はインディペンデントなのである。
おそらく、大仁田は全日本プロレスと新日本プロレスに対抗するサムシングとして“インディペンデント”という表現を使ったのだろう。プロレスにおけるインディペンデントというコンセプトはアメリカから輸入されたものだ。
全日本プロレス在籍時代、大仁田は同期の渕正信といっしょに約3年間、アメリカのリングを放浪した。1980年代前半のアメリカのレスリング・ビジネスは“世界最高峰NWA”が事実上のモノポリー(市場独占)を築いていた最後の時代だった。
NWAに加盟していない全米各地に散在していたインディペンデント団体はアウトロー・プロモーションと呼ばれ、NWAの“タカ派グループ”から経済制裁を受けた。
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